□重症意識障害(GCS 8点未満,JCS 100以上)では,気道確保と呼吸管理は必須であり,低酸素血症の合併を避ける。
□意識障害の救急診療では,最初のアプローチでショック,低酸素血症,低血糖の3つを除外する。
□血圧低下を伴う意識障害はショックによる脳機能障害であり,その原因検索と同時に蘇生処置を開始する。
□救急の臨床では,意識障害の評価方法として主にGCS(表1),JCS(表2)が使われている。また,鑑別診断方法としてAIUEO TIPS(表3)がよく用いられる。
□意識障害の診療では失神との区別が重要であり,その判断において病歴聴取が有用である。失神による意識レベルの低下は可逆性であり,そのほとんどは短時間で回復する。そのため,発症時の状況や意識障害の持続時間および経過について病歴聴取を行う(表4)。
□ABCDE(A:気道,B:呼吸,C:循環,D:中枢神経系,E:体温)の評価と初期対応は同時に行う。
□意識障害に伴う舌根沈下(気道閉塞)があれば,直ちに用手気道確保を行う。
□嘔吐物,気道異物による気道閉塞では,体位変換や吸引で誤嚥を防ぐ。
□頭蓋内圧亢進症状:増強する頭痛,繰り返す嘔吐,急激なレベル低下,瞳孔不同(一側の瞳孔散大)がみられる。
□脳ヘルニアの切迫:頭蓋内占拠性病変や脳浮腫では頭蓋内圧(intracranial pressure:ICP)が急激に上昇する。
□自発呼吸の有無,呼吸の様式に注意する。呼吸数5回/分以下では補助呼吸が必要となる。GCS 8点未満,咽頭反射の消失では気管挿管の適応である。脳細胞障害および脳浮腫の進行をきたす低酸素血症を避けるべきである。動脈血酸素飽和度(SpO2)>95%,動脈血酸素分圧(PaO2)>80mmHgを管理目標とする。
□換気障害:気道閉塞の有無,自発呼吸(努力呼吸の有無)について評価する。動脈二酸化炭素分圧(PaCO2)≧60mmHgで意識障害をきたす(CO2ナルコーシス)。高炭酸ガス血症では,脳灌流量増加によりICPが上昇し,脳血流が低下して細胞障害が起こり脳浮腫の増悪がみられる。
□病歴・臨床経過での判断:出血性ショックの有無,頭部以外の致命的な外傷の合併はないかを確認する。
□脳血流に影響を及ぼす因子:脳灌流圧,PaO2,PaCO2,脳局所細胞代謝を悪化させないようにする。
□初期診療における管理目標:頭部外傷合併例を参考にする。収縮期血圧(SBP)>120mmHg,平均動脈圧(MAP)>90mmHg,脳灌流圧(CCP)>60~70mmHg,ヘモグロビン>10g/dLが目安となる。
□頭蓋内圧亢進(脳ヘルニア)の初期徴候を見逃さないようにする。①GCS 8点以下またはGCSが2点以上急速に低下,②瞳孔不同,拡大した瞳孔側で対光反射の消失,③片麻痺が進行し,完全運動麻痺となる,④Cushing現象(血圧上昇,徐脈)などが挙げられる。
□異常高体温では脳組織が直接損傷されるので,42℃以上の体温上昇は避ける。
□悪性症候群では,40℃以上の高体温の持続と全身性筋強直がみられる。
□重症熱中症では意識障害(昏睡)と同時に多臓器不全,播種性血管内凝固(DIC)の合併をきたすので集中治療管理が必要である。
□低体温では温度低下に伴って脳血流が低下する。体温1℃低下とともに脳血流が6%低下する。
□軽度低体温(32.5~35.0℃)でも,健忘,無表情,構音障害,判断力低下,不穏がみられる。
□可能な限り脱衣を行い,全身の診察を丁寧に行う。体表所見で打撲痕や皮下血腫などを見逃さない。
□体表所見で黄疸や皮膚色素沈着,あるいは甲状腺腫大があれば,肝機能や甲状腺機能を調べる。
□口臭や吐物・分泌物に異臭を認める場合には,急性中毒の可能性を考える。
□まず,覚醒を評価する。視線が合うか,声掛けに反応はあるかを確認する。覚醒していれば,JCSは1桁以上である。GCSを用いる場合には開眼反応に着目し,会話の内容,四肢の動きで判断する。
□次に,見当識を評価する。名前,日付(生年月日など),場所が言えるかを確認する。
□注意:全盲患者やめまい症状が強く開眼できない状況では,応答反応が良好で自発的な動きに問題なければ清明とする。全失語では,指示動作は不可であるが自発的な動きがみられる。閉じ込め症候群(眼球正中固定,発語や自発運動がない)では自発的な動きがみられない。緊張病性昏迷では眼球運動は障害されず,自発呼吸も安定している。
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