□緊急処置を要する慢性機能性便秘はほとんどない。
□急性続発性便秘でバイタルサイン異常を伴う場合は,静脈路確保,A(airway),B(breathing),C(circulation)の安定化を第一優先とし,原疾患の診断と処置を進める。
□腫瘍,炎症,癒着,捻転,重積など,腸管の器質的狭窄・閉塞は減圧を,腹部臓器の炎症波及,尿路・胆嚢・胆管の感染や結石はドレナージや抗菌薬投与を行う。内分泌代謝,電解質異常,感染症などの全身性疾患は,病態に応じた適切な初療を行う。
□絞扼性イレウスや消化管穿孔は,原則的に緊急手術の適応となる。
□救急診療では,身体所見から急性続発性便秘を疑う場合に施行する。悪性腫瘍を疑う場合は腫瘍マーカーも追加する。
□腹部X線:腸管ガス像異常の有無を確認する。
□イレウスや急性膵炎などの腹部臓器疾患を疑う場合はCT(可能であれば造影)や超音波検査を必要に応じて施行する。
□急性腹症,消化管穿孔に浣腸は原則禁忌であり,安易に施行しない。
□重度の慢性機能性便秘に対し,グリセリン浣腸を施行する際には左側臥位を基本体位とし,慎重に行う。立位施行では直腸穿孔のリスクがある。
□続発性便秘は原疾患に対する適切な治療を行う。
□薬剤性と考えられる場合は,原因薬剤を中止もしくは薬剤の変更を考慮する。
□中高年で亜急性に増強する便秘では悪性疾患の存在を考慮し,注腸検査や大腸内視鏡検査を計画する。
□慢性機能性便秘に対する第一選択薬は浸透圧性下剤である。効果が十分に得られない場合は,刺激性下剤を併用する。
□慢性機能性便秘の原因として過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)の概念が確立している2)。RomeⅣ診断基準に基づいて診断され,食事および生活習慣改善と浸透圧性下剤や刺激性下剤,粘膜上皮機能改善薬(アミティーザ®)などに加え,抗うつ薬(三環系,SSRI),抗不安薬,心理療法などを併用する場合もある。
1) 大久保秀則, 他:日内会誌. 2013;102(1):83-9.
2) Longstreth GF, et al:Gastroenterology. 2006; 130(5):1480-91.
▶ 日本消化器病学会, 編:機能性消化管疾患診療ガイドライン2014─過敏性腸症候群(IBS), 2014.
[https://www.jsge.or.jp/files/uploads/IBSGL2.pdf]
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