□進行・再発非小細胞肺癌の治療は,がん細胞の遺伝子異常を調べて,その特徴に応じた治療を行う時代になっている。
□日本人の肺癌に最も多いのは,EGFR遺伝子変異で,非小細胞肺癌の約4割にみられる。EML4-ALK融合遺伝子は,非小細胞肺癌の3~5%に認められる。
□EGFR遺伝子変異は,非・軽喫煙,腺癌の症例において頻度が高い。一方,EML4-ALK融合遺伝子は,若年者,非・軽喫煙者,腺癌,EGFR遺伝子変異陰性症例に多く認められる。
□EGFR遺伝子変異とALK融合遺伝子の有無は,EGFR阻害薬やALK阻害薬の適応を確認して治療方針を決定するのに必須となっており(図),初回治療開始前に測定しておく。分子標的薬であるEGFR阻害薬やALK阻害薬の治療により肺癌の予後は確実に改善している。
□肺癌は,様々な臓器に転移する。遠隔転移が多い臓器は肺,脳,骨,肝臓および副腎である。転移部位によって症状は違い,脳転移によるふらつき,めまい,頭痛や骨転移による疼痛,病的骨折などがある。
□長引く腰痛が肺癌からの骨転移が原因であることもしばしばある。また,局所進展による症状としては,咳嗽,喀痰(血痰),嗄声,胸部痛,胸水貯留,呼吸苦などが起こる。
□組織診もしくは細胞診による肺癌の確定診断を行う。
□遺伝子異常の有無を検査するために,組織診断が望ましい。前述した部位への転移診断に,CT,MRI,PET,骨シンチグラフィなどを行い総合的に判断する。リンパ節転移診断や脳転移診断には造影CTや造影MRI検査が望ましい。
□EGFR遺伝子変異検査には様々な検査法があり,施設によって実施している検査法は異なる。
□いずれもPCR(polymerase chain reaction)をベースとした感度の高い優れた検査法で,保険適用になっている。遺伝子変異を測定する腫瘍サンプルは,パラフィン包埋の腫瘍組織(手術検体や生検検体),腫瘍細胞を含む胸水や心嚢液などの液性検体などで,気管支鏡検査時に得られた腫瘍細胞を含む細胞診検体なども検査可能である。検査結果は,検体提出からおおよそ7日間で判明する。
□EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(tyrosine kinase inhibitor:TKI)に抵抗性の耐性二次変異EGFR T790Mの検査が末梢血から採取した血漿検体で測定可能になっている。この検査はコンパニオン診断検査であり,EGFR T790M変異の有無でオシメルチニブ投与の適応を判断するのに用いる。
□ALK融合遺伝子の診断方法は,FISH(fluorescence in situ hybridization)法,高感度IHC(immunohistochemistry)法,RT-PCR(reverse transcription-PCR)法の3つがある。
□保険適用のある検査は,FISH法と高感度IHC法(アレクチニブ投与の適応判断時に用いる)である。これらの検査には,パラフィン包埋の腫瘍組織(手術検体や生検検体)が必要である(細胞診検体では測定できない)。
□検査手順としては,高感度IHC法によるスクリーニングを行い,陽性の場合,FISH法で確認する(日本肺癌学会のALK遺伝子検査の手引き)。
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