□食道良性腫瘍(benign tumor of the esophagus)は比較的稀な疾患で,無症状で経過することが多い。
□粘膜下腫瘍の形態をとることが多く,平滑筋腫,神経鞘種,顆粒細胞腫,乳頭腫,血管腫,脂肪腫などがある。
□平滑筋腫が最も多く,約70%を占める。
□多くは無症状で経過する。
□腫瘍が大きいと,つかえ感,嚥下障害,嚥下時違和感,胸焼けなどの症状を呈する。
□出血をきたす可能性のある腫瘍もある。
□診断には,バリウムを用いた食道造影検査,食道内視鏡検査,食道超音波内視鏡検査,胸部CT検査,胸部MRI検査が行われる。悪性が疑われる場合はPET検査を施行することもある。
□確定診断は,内視鏡下生検や超音波内視鏡下吸引生検(EUS-guided fine needle aspiration biopsy:EUS-FNAB)によってなされる。小さい腫瘍の場合は十分な組織量が採取できず,確定診断に至らないことも多い。
□粘膜下腫瘍の形態で,腫瘍径が2cm以上のものは,頻度は低いが消化管間質腫瘍(GIST)や平滑筋肉腫,悪性神経鞘腫の可能性があるため,鑑別が必要である。
□正常粘膜で覆われた粘膜下腫瘍の形態をとる。固有筋層内輪筋由来のものが最も多いが,粘膜筋板由来のものもある。粘膜筋板由来のものは可動性が良好である。
□免疫組織染色でdesmin,SMAが陽性,S-100,CD34,KITが陰性であり,GISTとの鑑別診断が可能である。
□正常粘膜で覆われた粘膜下腫瘍の形態をとる。表面は平滑で凹凸は少なく,透見される色調変化も乏しい。腫瘍は食道固有筋層内のアウエルバッハ(Auerbach)神経叢由来のことが多い。
□免疫染色ではS-100が陽性で,desmin,SMA,CD34,KITは陰性である。 〈顆粒細胞腫granular cell tumor〉
□正常粘膜で覆われた粘膜下腫瘍の形態をとる。約1cm程度の黄白色調の隆起性病変で,頂部が平坦かつ陥凹し,大臼歯様隆起と形容される。粘膜固有層のシュワン(Schwann)細胞由来の腫瘍である。
□組織学的には胞巣状増殖を認め,PAS陽性の好酸性顆粒を有する。免疫染色ではS-100が陽性で,desmin,SMA,CD34,KITは陰性である。
□食道扁平上皮に発生する良性の上皮性腫瘍である。内視鏡検査では軽度白色調で,分葉状の無茎性または亜有茎性隆起の形態をとることが多い。拡大観察では乳頭内に異型のない血管構造が認められる。
□内視鏡生検で確定診断が可能であり,組織学的には血管結合組織の増生および異型のない扁平上皮の乳頭状発育が特徴である。
□毛細血管性血管腫,海綿状血管腫,両者の混合型がある。内視鏡検査では,小さなものは赤い小隆起として認識されるが,比較的大きなものは青色調の粘膜下腫瘍様隆起として認識される。軟らかく,生検鉗子の圧迫で容易に凹む。
□静脈瘤はカラードプラ超音波にて血流を認めるが,血管腫は腫瘍内に血流を認めない。
□頸部食道に発生するものが多く,無茎性の粘膜下腫瘍様のものから有茎性の巨大ポリープ状まで様々な形態がある。
□内視鏡検査では表面平滑で正常粘膜に覆われた軟らかい腫瘤,EUSでは粘膜下層を主座とする内部均一な高エコー像,CT検査では低吸収像,MRI検査ではT1強調像で高信号,T2強調像で等信号の腫瘤として描出され,画像所見での確定診断が可能である。
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