食道良性腫瘍には様々な種類があるが,最も多いのは食道平滑筋腫で約7割を占める。そのほかには,乳頭腫,ポリープ,脂肪腫,リンパ管腫,囊腫,血管腫などがあり,食道粘膜の下から形成される粘膜下腫瘍がほとんどである〔「消化管間質腫瘍(GIST)」の稿参照〕。症状として,腫瘍サイズが小さい場合,原則,自覚症状はないことが多い。腫瘍サイズが大きくなると,食べ物を飲み込んだときに食塊が喉につかえる感じや胸焼け,さらに胸痛などがある。稀に起こる症状として,潰瘍が併発した場合に出血(吐血・下血)することもある。
一般に健診などで偶然発見されることが多い。食道良性腫瘍の検査・診断方法として,基本的には問診にて,症状を中心に背景因子を含めて聴取する。上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)で腫瘍の部位,大きさ,色調,表面性状などを観察する。必要に応じて上部消化管造影検査も追加する。粘膜下腫瘍は,原則病変の主座は粘膜下組織にあり,上皮の表面に露出していないので内視鏡直視下での生検は困難な場合が多い。超音波内視鏡(EUS)で腫瘍内部を観察し,必要に応じて,超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNA)を行う。さらにCT検査やMRI検査でも内部の性状や腫瘍の広がりを調べることができる。これらの検査を組み合わせて総合的に診断する。
食事通過障害などの症状のある場合を除き,腫瘍が小さい場合は,原則経過観察とする。増大傾向があれば,上記検査の結果をふまえて治療を検討する。腫瘍が大きい場合は,厳重なる経過観察や,増大傾向があれば腫瘍が小さい場合と同様に検査結果をふまえて治療を検討する。
治療としては,内視鏡的切除術として,内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)を行う。腫瘍が大きい場合や症状により内視鏡的切除が難しい場合は手術(主に胸腔鏡手術・腹腔鏡手術)となる。
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