株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

痔核・裂肛[私の治療]

No.5268 (2025年04月12日発行) P.46

石原聡一郎 (東京大学医学部腫瘍外科・血管外科教授)

登録日: 2025-04-11

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 種々の肛門疾患の中で,痔核は最も頻度が高い疾患であり,無症状例も含めると有病率は約50%とも報告されている。「肛門クッション」と呼ばれる肛門管内の血管や結合組織からなる柔らかい組織が腫大することで,出血,疼痛,脱出などの症状を生じる。
    裂肛も頻度が高く,痔核と類似した症状を呈するが,排便時に生じる鮮血と,数時間続くこともある強い肛門痛が特徴である。裂肛は肛門上皮のびらん,亀裂,潰瘍であり,痔核とは異なる病態である。

    ▶診断のポイント

    症状の聴取と肛門部の視診,触診,肛門鏡による観察が診断のポイントである。肛門出血は他の消化管疾患,特に大腸癌などの悪性疾患によっても生じるので鑑別を念頭に置くことが重要である。炎症性腸疾患や感染症との鑑別が必要になる場合もある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    痔核・裂肛ともに治療の基本は保存的治療である。硬便などの便通異常や,便座に長時間座り続けるような過度の「いきみ」,アルコールの過剰摂取などは病状を悪化させるので,生活習慣の改善が重要である。

    便通異常の改善のためには種々の緩下剤が使用される。特に痔核による炎症や浮腫に対しては,トリベノシドやブロメラインを含む内服薬が有効である。

    局所の薬物療法としては軟膏や坐薬などの外用薬が有効である。ステロイドを含む外用薬は炎症に対する効果がはっきり表れやすいが,長期に使用することによりステロイド性皮膚炎や白癬症などの有害事象が生じることがあるので,漫然と使用しないよう注意が必要である。ヘルミチンS(リドカイン・アミノ安息香酸エチル・次没食子酸ビ

    スマス)などのビスマス合剤は特に出血に対して有効性が高い。

    保存的治療によっても十分な改善がみられない場合には外科的治療が行われる。

    残り1,210文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top