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肛門挙筋症候群[私の治療]

No.5265 (2025年03月22日発行) P.47

前田耕太郎 (医療法人社団健育会湘南慶育病院副院長)

志田敦男 (医療法人社団健育会湘南慶育病院外科・消化器外科診療部長)

登録日: 2025-03-22

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  • 肛門挙筋症候群は,慢性の直腸肛門痛を主訴とする原因不明の疾患であり,国際的な消化管機能性疾患の診断基準であるRome Ⅳの分類では,3つある機能性直腸肛門痛のひとつである。肛門挙筋症候群の有病率は6.6%で,女性で7.4%,男性で5.7%と女性でやや頻度が高いとの報告があるが,実際には稀にしか遭遇しない疾患である。発症年齢は6~90歳と広範囲であるが,30~60歳が多くを占める。原因不明の疾患であるが,骨盤底筋群の痙攣と上昇した肛門静止圧(肛門を安静時に締めている圧力)や,排便時の骨盤底筋群の協調運動障害に由来すると想定されている。

    ▶診断のポイント

    【Rome Ⅳの診断基準】

    下記のすべての項目に該当すること。①慢性あるいは反復性の直腸の痛み,②30分以上持続する痛みのエピソード,③恥骨直腸筋の牽引による圧痛,④直腸痛を起こす疾患(炎症性腸疾患,筋層内膿瘍や亀裂,血栓性痔核,前立腺炎,骨盤底の主な構造的変化)の除外。6カ月前から症状があり,最近3カ月間は上記の基準を満たしていること。

    【症状の特徴】

    ぼんやりした鈍痛,もしくは高位直腸を圧されるような感覚の痛みで,立位や臥位より坐位で悪化する痛み。

    【理学的所見】

    肛門挙筋もしくは骨盤底や腟の痙攣と,しばしば右より左に多い触診時の恥骨直腸筋の圧痛。

    【検査】

    肛門診察により器質的な肛門・前立腺疾患などの除外,注腸,内視鏡による腸疾患の除外,CT,MRI,腹部超音波検査による骨盤底の構造変化や膿瘍などの除外。

    【鑑別疾患】

    肛門挙筋症候群は痛みの持続時間が30分以上あるが,痛みの持続時間が短い機能性直腸肛門痛のひとつである消散性肛門痛との鑑別を行う。恥骨直腸筋の牽引による圧痛の有無により,他のもう1つの機能性直腸肛門痛である圧痛のない非特異性直腸肛門痛との鑑別を行う。ただし,これらの所見には実際的には重複も認められる。

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