□平成26年人口動態統計(厚生労働省大臣官房統計情報部編)によれば,胃癌(cancer of the stomach/gastric cancer)による死亡率(人口10万対)は男性51.6,女性25.5で,悪性腫瘍の中ではそれぞれ2位,3位となっている。罹患率低下が報告されているが,男性の死亡率はほぼ横ばいで,毎年全国で5万人前後が胃癌により命を落としている。
□若年者のHelicobacter pylori感染が低下してきており,胃癌の発生頻度は低下することが予想されている一方,高齢者の胃癌死亡率は上昇しており,今後の課題になるものと考えられる。
□早期癌の段階では症状を呈することは少なく,検診で発見されることが多い。
□癌の進行に伴い,食欲低下,体重減少,出血(吐血・下血),幽門狭窄による嘔吐・経口摂取障害,腹水貯留による腹部膨満などを契機に診断される例も少なくない。
□特有の症状はないものの,頻度の高い疾患であることを念頭に置き,上記症状を有する例では上部消化管検査を行うことが重要である。
□存在診断のための検査と,治療方針決定のための検査に大別される。
□検診ではバリウムによるX線造影検査が行われることが多いが,胃癌確定診断のためにはさらに内視鏡検査を行う。その際の生検による組織診断は必須である。
□経鼻内視鏡の普及などに伴い,平成28年度からは検診においてX線のほか内視鏡検査も推奨されることとなっている。
□治療方針決定のためには深達度診断や遠隔転移診断が重要である。内視鏡検査の精度は適切な胃癌治療に直結する。深達度診断には,時に超音波内視鏡(EUS)も有用である。
□治療方針決定にはCTによるリンパ節転移や遠隔転移診断も必要である。PETが参考になる場合もある。
□治療開始前に診断しておくべき項目として,深達度,腫瘍径,組織型,リンパ節転移・遠隔転移の有無などが挙げられる。
□X線造影検査の重要性は低下しているように考えられているが,胃の全体像を把握するためにはいまだ有用な検査である。Ⅳ型胃癌や食道胃接合部癌などでは,範囲診断のために行われることも多い。
1190疾患を網羅した最新版
1252専門家による 私の治療 2021-22年度版 好評発売中
PDF版(本体7,000円+税)の詳細・ご購入は
➡コチラより