□単純性潰瘍(simple ulcer)は,腸管ベーチェット病に酷似した慢性難治性の回盲部潰瘍が認められるものの,ベーチェット病の臨床徴候を欠如する,あるいはベーチェット病疑いにとどまる病態である。腸管ベーチェット病とほぼ同じ病態と考えられるが,ベーチェット徴候のないものは治療反応性が異なるとする意見もある。一定のコンセンサスは得られていない。
□染色体異常(trisomy 8)に伴う骨髄異形成症候群でも単純性潰瘍に類似した回盲潰瘍がみられる。
□非特異的多発性小腸潰瘍症(non-specific multiple ulcers of small intestine)は組織学的に非特異的で,粘膜下層までにとどまる浅い潰瘍が下部回腸に多発し,慢性持続性の出血と蛋白漏出をきたす難治性腸疾患である。
□プロスタグランジン膜輸送体蛋白を規定するSLCO2A1遺伝子のホモ変異による遺伝性疾患であることが報告され,独立した疾患単位として認知された。
□持続性の右下腹部痛が主症状である。加えて右下腹部に腫瘤を触知する。発熱が多く,肉眼的血便を伴うこともある。
□ベーチェット徴候として再発性口腔内アフタを伴うことがある。
□毛嚢炎や関節痛など他のベーチェット徴候が遅れて出現することがあるので,臨床症状を慎重に追跡するべきである。
□血液検査:C反応性蛋白,赤沈,α2-グロブリンなどの非特異的炎症所見が陽性となる。
□消化管内視鏡・X線検査:回盲部位に深い打ち抜き様潰瘍や下掘れ潰瘍が単発ないし数個程度多発して認められる。
□結核菌やサイトメガロウイルスを含めたいかなる腸管感染症も否定される。
□若年時より,高度の貧血や低栄養状態による易疲労感,浮腫がみられる。成長障害や二次性徴の遅延などを伴うこともある。
□肉眼的血便がみられることはない。また,小腸狭窄をきたさない限り,腹痛,下痢などの消化器症状はみられない。
□血液検査:高度の鉄欠乏性貧血と低蛋白血症がみられる。しかし,C反応性蛋白,赤沈などの炎症所見は陰性ないし軽度上昇にとどまる。便潜血反応は持続的に陽性を示す。
□消化管内視鏡・X線:終末回腸以外の回腸に横走ないし斜走して,枝わかれする浅い潰瘍が多発し,腸管の変形が顕著となる。胃・十二指腸,結腸にも潰瘍が発生することがある。
□SLCO2A1遺伝子のホモ変異,ないし接合ヘテロ変異がみられる。
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