□直腸の粘膜脱症候群(mucosal prolapse syndrome of the rectum:MPS)は,du Boulayら1)が従来の孤立性直腸潰瘍や深在嚢胞性大腸炎(colitis cystica profunda:CCP)を包括した疾患概念として1983年に提唱した。
□本症は顕性あるいは潜在性の粘膜脱により生じる病変であり,主に下部直腸にみられる。粘膜が牽引刺激を受けることで虚血性変化と再生性変化を生じ形成されると考えられている。
□肉眼形態は多彩であり,潰瘍型,隆起型,平坦型,混合型,CCP型に分類される。
□組織学的に粘膜固有層の平滑筋線維と膠原線維の増生(線維筋症,fibromuscular obliteration)が特徴的である2)。
□排便時に長時間過度に腹圧をかける習慣のある患者(strainer)に多いが,隆起型では排便習慣に異常がなく痔核に随伴する場合も多い。
□すべての年齢層に分布し,性差はみられない。
□本症による症状は排便時出血,粘液排出,残便感,肛門部痛,腫瘤の脱出などであるが,下痢,便秘や便潜血陽性などを理由に検査を受けて病変を指摘されることも多い。
□通常,大腸内視鏡で診断される。潰瘍型(図1)は下部直腸前壁側が好発部位で,通常境界明瞭な潰瘍を形成する。単発が多いが多発することもある。
□隆起型(図2)は下部直腸の歯状線直上に好発する。単発ないし多発の無茎性から亜有茎性で大きさは様々であり,全周性の病変を形成することもある。隆起表面は発赤し白苔を伴うことが多い。
□平坦型は平坦な発赤粘膜として認識され,生検で線維筋症が証明されれば診断は確定する。以上の病型が混在することも少なくない。
□CCPのうち,限局性のものは直腸粘膜脱症候群の一亜型と考えられており,なだらかな粘膜下腫瘤を形成し超音波内視鏡(EUS)では嚢胞が低エコーで描出される。
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