□腹膜とは腹腔内および腹腔内臓器を被覆する漿膜であり,その主たる機能は臓器固定・保護機能である。本来無菌である腹腔内において,各種臓器における細菌感染や物理的・化学的刺激による炎症が腹膜に波及する状態が腹膜炎(peritonitis)である。
□経過と程度において,腹膜の有する臓器保護機能が破綻し,他領域の腹膜や臓器に感染・炎症が波及する状態を急性汎発性腹膜炎と呼び,その程度が限定しているものを急性限局性腹膜炎と呼ぶ。
□臓器保護機能を超えない感染・炎症が持続する状態を慢性腹膜炎と呼ぶ。
□治療は原疾患に対する治療が先決であり,緊急処置を要する。
□急性腹膜炎の症状は原因疾患によって多様であるが,主として腹痛を認める。
□吐気・嘔吐などの消化器症状を認める。
□感染・炎症の波及に伴う発熱,頻脈や病勢によりショックを呈することもある。
□急性腹膜炎の診断は原因疾患によって異なるため,まず病歴・身体所見から鑑別診断を行うことが重要である。
□理学的所見では圧痛,Blumberg徴候,筋性防御,腸雑音低下が認められる。
□血液検査:白血球増加,炎症反応(CRP)高値が認められる。
□画像検査:腹部単純X線,腹部超音波,腹部CTが用いられることが多く,原因疾患(胆嚢炎,膵炎,虫垂炎など)に応じた所見が得られる。
□腹部単純X線:特に消化管穿孔の場合には,横隔膜下の空気遊離像が認められる。
□結核性腹膜炎・癌性腹膜炎は慢性腹膜炎の代表である。腹水を呈することが多く,腹水細胞診や培養にて診断する。
1190疾患を網羅した最新版
1252専門家による 私の治療 2021-22年度版 好評発売中
PDF版(本体7,000円+税)の詳細・ご購入は
➡コチラより