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慢性腎臓病(CKD)

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  • ■治療の考え方

    原疾患に対する治療:たとえば,①IgA腎症に対するステロイドパルス療法+扁桃摘出,②ループス腎炎に対するステロイド+免疫抑制療法など。

    危険因子()に対する介入・治療:①高血圧,糖尿病,脂質異常,高尿酸血症に対する食事療法と薬物療法,②肥満に対する介入,適正体重の維持。禁煙は必須。

    07_02_慢性腎臓病(CKD)


    代謝異常に対する治療:①高カリウム血症に対して,カリウム制限食,イオン交換樹脂。②低カルシウム血症に対して活性型ビタミンD。③高リン血症に対して蛋白質摂取制限,リン吸着薬。④アシドーシスに対して,利尿薬,重曹,血液HCO3-濃度を20mEq/L以上に維持。

    ■治療上の一般的注意&禁忌

    【注意】

    3段階で治療計画を立てる。①原因疾患に対する治療,②危険因子に対する介入・治療,③腎機能低下に伴う病態の是正。

    腎毒性物質あるいは腎排泄性薬剤を中止または減量:①NSAIDsは中止,②抗生物質,抗癌薬,その他,腎毒性のある薬物に注意,③腎排泄性の薬物は腎機能低下の程度により減量または中止,④マグネシウムを含む緩下剤は避ける。

    ■典型的治療

    蛋白質摂取:GFR<45mL/分/1.73m2で0.6~0.8g/kg(標準体重)/日。

    エネルギー摂取:25~35 kcal/kg(標準体重)/日。

    エネルギー量や栄養素は病態に応じて調整する。

    運動は1日30分以上の有酸素運動が基本。

    糖尿病性腎症における糖尿病のコントロールは,HbA1c<7.0%を目標とする。

    保存期CKDの腎機能低下に伴う病態是正について以下に記載する。

    【高血圧】

    尿蛋白の有無と,糖尿病の有無で治療方針が異なる。

    〈尿蛋白(+)かつ糖尿病(+)〉

    RA阻害薬を第一選択薬として,血圧<130/80mmHgを目標とする。

    一手目:イルベタン®100mg錠/アバプロ®100mg錠(イルベサルタン)1回1錠 1日1~2回(夕食後または朝・夕食後),またはオルメテック®20mg錠(オルメサルタン)1回1錠 1日1~2回(夕食後または朝・夕食後)

    血圧が目標まで達しなければ上記に追加。

    二手目:〈一手目に追加〉ノルバスク®5mg錠/アムロジン®5mg錠(アムロジピン)1回1~2錠 1日1回(朝または夕食後)

    血圧が目標まで達しなければ,さらに上記に追加。

    三手目:〈二手目に追加〉ナトリックス®1mg錠(インダパミド)1回0.5~1錠 1日1回(朝食後)

    *GFR<30mL/分/1.73m2のときには,ダイアート®30mg錠(アゾセミド)またはラシックス®20mg錠(フロセミド)1回1錠 1日1回(朝食後)追加

    〈尿蛋白(-)かつ糖尿病(-)〉

    高齢者腎硬化症が主体と考えられる。心血管疾患の高危険群である。Ca拮抗薬を第一選択薬として,血圧<140/90mmHgを目標とする。

    一手目:ノルバスク®5mg錠/アムロジン®5mg錠(アムロジピン)1回1~2錠 1日1回(朝または夕食後),またはアダラート®CR20mg錠(ニフェジピン)1回1~2錠 1日2回(朝・夕食後)

    血圧が目標まで達しなければ上記に追加。

    二手目:〈一手目に追加〉イルベタン®100mg錠/アバプロ®100mg錠(イルベサルタン)1回1錠 1日1回(夕食後),またはオルメテック®20mg錠(オルメサルタン)1回1錠 1日1回(夕食後)

    血圧が目標まで達しなければ,さらに上記に追加。

    三手目:〈二手目に追加〉ナトリックス®1mg錠(インダパミド)1回0.5~1錠 1日1回(朝食後)

    *GFR<30mL/分/1.73m2のときには,ダイアート®30mg錠(アゾセミド)またはラシックス®20mg錠(フロセミド)1回1錠 1日1回(朝食後)追加

    〈尿蛋白(-)かつ糖尿病(+),尿蛋白(+)かつ糖尿病(-)〉

    尿蛋白(+)かつ糖尿病(+)に準じた治療を行う(エビデンスは弱い)。

    【高カリウム血症】

    生野菜や果物の摂取制限のみで管理できなければ,以下を追加。

    一手目:カリメート®散(ポリスチレンスルホン酸カルシウム)1回5g(1包) 1日3回

    【CKD-MBD(CKDにおける電解質骨異常)】

    低カルシウム血症・高PTHに対して。

    一手目:アルファロール®0.25μgカプセル/ワンアルファ®0.25μg錠(アルファカルシドール)1回1~2カプセル(錠)1日1回(朝食後)

    高リン血症に対して,蛋白質摂取制限をするが不十分なら以下を追加。

    一手目:カルタン®500mg錠(沈降炭酸カルシウム)1回1~2錠 1日3回,またはホスレノール®チュアブル250mg錠(炭酸ランタン)1回1~2錠 1日3回

    【腎性貧血】

    Hb 10~12g/dLに維持する。

    一手目:ネスプ®注射液(ダルベポエチンアルファ)60~120μg,またはミルセラ®注(エポエチンベータペゴル)50~150μg(2週~4週に1回)

    鉄欠乏性貧血が合併していれば,鉄剤を追加投与する。

    ■高齢者への対応

    高血圧治療で以下の事項に注意する。

    ①収縮期血圧を110mmHg未満への降圧は避ける。

    ②RA系阻害薬(ACE阻害薬やARB)を処方する際,脱水の危険(下痢・嘔吐,食欲不振など)があるときには中止し,速やかに受診するよう指導する。

    ③尿蛋白陰性で腎硬化症が疑われる場合には,Ca拮抗薬を中心とした降圧療法を行う。RA系阻害薬は使用するとしても少量にとどめるほうがよい。

    蛋白質摂取制限は0.8g/kg/日程度までにする。それ以上の制限は避ける。

    糖尿病の治療ではHbA1c 8.2%未満を目標値とする。

    サルコペニアは高齢者のフレイルの重要な要素である。しっかりと摂取エネルギーを確保し,適度な運動を指導する。

    ■ケアおよび在宅でのポイント

    CKDの治療は,①腎機能の低下速度をできる限り小さくすることが目的となる,②継続することが大事である,ことを理解してもらう。

    家庭血圧の測定習慣をつけてもらう。朝と晩の2回測定して血圧手帳に記録し,外来受診時に持参してもらう。

    食事療法の指導は,実際に料理をつくる人と一緒に行う。繰り返す必要がある。

    ■文献・参考資料

    【参考】

    ▶ 日本腎臓学会, 編:CKD診療ガイド2012.

    ▶ 日本腎臓学会, 編:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2013.

    ▶ 日本腎臓学会, 編:慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年版.

    ※いずれも東京医学社から発行されているが,日本腎臓学会のホームページからダウンロード可能

    【執筆者】 木村健二郎(医療機能推進機構高輪病院院長)

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