腎梗塞は,腎動脈主幹部もしくはその分枝が何らかの原因により閉塞し,末梢側の腎組織が虚血・壊死に陥る疾患である。腎梗塞438例の解析によれば,原因は心原性55.7%(うち86.5%が心房細動),腎動脈損傷7.5%,過凝固6.6%,特発性30.1%であり,心房細動による塞栓症が最も多かった1)。また近年は,COVID-19による本症の報告が増加している2)。
コレステロール塞栓症(cholesterol crystal embolization:CCE)は,大動脈などの大血管壁にある粥腫が何らかの原因で崩壊し,粥腫中のコレステロール結晶が飛散し塞栓症をきたす疾患である。腎・四肢・消化管・中枢神経・網膜などに臓器障害を引き起こす。カテーテルや手術,抗凝固療法などが誘因となる医原性CCEと,大動脈壁からコレステロール結晶が自然に飛散する特発性CCEにわけられるが,医原性CCEが全CCE症例の77%を占めると報告されている3)。本症は,進行した動脈硬化を基盤に発症する予後不良な疾患であり,発症した場合,透析導入が約30%,1年死亡率が20~60%と報告されている3)。
急激に側腹部痛・腰痛が出現し,血尿,血圧上昇を伴う場合,本症を疑う。尿路結石や腎盂腎炎との鑑別が重要である。血尿の頻度は30%程度であり,血尿がなくても否定できない。血液検査では,LDHが正常上限の2~4倍に上昇するが,ASTは正常~軽度上昇にとどまる1)。造影CTで,閉塞血管の支配領域に一致した陰影欠損像を認めることで,診断を確定できる。
血管手技や抗凝固療法後に,原因不明の急性もしくは亜急性の腎機能障害をきたした症例において本症を想起する。塞栓症状として,下肢の網状皮斑(livedo reticularis)や眼底検査で網膜動脈内に小塞栓(Hollenhorst plaque)を認めることがあり,診断に有用である。血液検査では,20~75%の症例に好酸球増多(500/μL以上)を認め,本症に特徴的な所見である。皮膚または腎組織でコレステロール結晶を同定できれば確定診断となる。侵襲度の低い皮膚生検が勧められるが,生検部位の創傷治癒が遅れ,難治化する場合もあり,生検の必要性は慎重に判断すべきである。
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