□急性糸球体腎炎の多くはA群β溶連菌感染後に発症するため,溶連菌感染後急性糸球体腎炎(acute poststreptococcal glomerulonephritis:APSGN)とも呼ばれる。無症状のものから,一時的に透析を必要としたり,PRES(posterior reversible encephalopathy syndrome)を発症する重症例もあるが,ほとんどが自然軽快し腎予後も良好である。
□今もなお世界で最も一般的な急性腎炎であるが,そのほとんどは発展途上国で発症している。先進国では減少しており,抗菌薬使用の普及などの関連が示唆されている。5~12歳の小児に好発し,3歳以下では稀である。
□A群β溶連菌の細胞壁成分のM蛋白が腎組織と共通抗原を持つために,菌体成分に対して成立した免疫応答が宿主の組織障害をきたすと考えられている。このほかに,黄色ブドウ球菌,肺炎球菌,エルシニア,B型肝炎ウイルス,水痘ウイルス,パルボB19ウイルス,マイコプラズマ,トキソプラズマなども急性腎炎惹起性がある。
□咽頭感染後1~3週間後,皮膚感染後3~6週間後に腎炎を発症する。
□ほとんどの症例において血尿・蛋白尿を認める。30~50%に肉眼的血尿がみられ,浮腫や高血圧を認めるが,ネフローゼ症候群を呈するのは稀である。
□無尿や重度の高血圧症例では透析が必要となることもある。
□時にPRESをきたすため,注意が必要である(後述)。
□血液検査で時に尿素窒素やクレアチニンの上昇,高カリウム血症を認め,尿所見では血尿(変形赤血球・時に赤血球円柱を伴う)と蛋白尿を認める。
□血液検査では補体の低下が特徴的である。最初の2週間で90%にC3・CH50の低下がみられる。alternative pathwayの活性化が主であるためC4はほぼ正常であることが多い。補体は4~8週間で回復する。
□溶連菌罹患の検索として,咽頭培養(感度が低い)や,血清学的検査(ASOが最も感度が高い)などを行う。
□腹部超音波検査では軽度の腎腫大・輝度の上昇がみられる。
□溢水傾向になりやすいため,血管内容量の評価は重要である。
□基本的に腎生検は不要であるが,腎機能障害やネフローゼ状態の持続,急性腎不全合併,8週間以上低補体血症が持続するときには腎生検を行う。
□低補体血症を呈する全身性エリテマトーデス(SLE),膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN),C3腎症などが鑑別となる。
□SLEではclassical pathwayが活性化されるため,C3・C4ともに低下する。低補体血症の回復が悪い場合には上記の疾患の可能性を考える必要がある。
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