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高カルシウム血症

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-19
松本俊夫 (徳島大学名誉教授/徳島大学藤井節郎記念医科学センター顧問)
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  • ■疾患メモ

    高カルシウム(Ca)血症は,血清Caが10.3mg/dL以上のことである。軽度なら脱力感,易疲労感,集中力の低下,頭痛,口渇,食欲不振,悪心,便秘などの非特異的症状が主体である。重症例では記憶障害,傾眠や昏迷等の中枢神経障害,腎機能障害から高カルシウム血症クリーゼをきたし,昏睡や急性腎不全に陥る場合もある。

    原発性副甲状腺機能亢進症,悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症のいずれかによるものが多い。

    生理食塩液を主体とした補液による脱水の是正や,ループ利尿薬によるCa排泄の促進とともに,骨吸収の亢進が主体の場合はビスホスホネート,腸管カルシウム吸収の亢進が主体の場合は糖質コルチコイドを投与する。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    血清Caが12mg/dL以下の軽症例ではほとんど症状を認めないか,あっても脱力感,易疲労感,集中力の低下,頭痛,口渇,食欲不振,悪心,便秘などの非特異的症状が主体である(表1)。

    07_38_高カルシウム血症


    血清Caが14mg/dL前後になると,記憶障害,傾眠や昏迷等の中枢神経障害,多尿・脱水などによる腎機能障害が出現する(表1)。

    血清Caが16mg/dLを超えると,中枢神経系に重篤な障害を生じ昏睡をきたし,急速に腎不全を発症し死に至る場合がある。このような病態を高Ca血症クリーゼと呼び,緊急治療を要する。

    【検査所見】(



    血清Caのうち生理機能に関わるのは約50%を占めるイオン化Caである。残りの大部分はアルブミンなどの蛋白に結合しているため,低アルブミン血症が存在する場合は,以下の補正式による補正Caで評価する。

    補正Ca濃度(mg/dL)=実測Ca濃度(mg/dL)+〔4-血清アルブミン濃度(g/dL)〕

    〈原発性副甲状腺機能亢進症〉

    高Ca血症患者では,まずビタミンDやビタミンA中毒症の存在,長期臥床や不動状態にないかを確認する。

    Ca感知受容体(CaSR)の不活性化変異による家族性低Ca尿性高Ca血症(familial hypocalciuric hyper-calcemia:FHH)では,尿細管Ca再吸収が亢進しているため,尿中Ca分画排泄率(fractional excretion of calci-um:FECa)が1%未満の低値を示す。

    上記が除外された高Ca血症患者で,血清intact PTH濃度が30pg/mL未満に抑制されていなければ,原発性副甲状腺機能亢進症が疑われる。軽症例では境界値を示す場合も多く,検査を繰り返す必要がある。

    〈悪性腫瘍〉

    悪性腫瘍の一般的には進行例の場合,血清intact PTHが低値で,かつ副甲状腺ホルモン関連ペプチド(para-thyroid hormone-related peptide:PTHrP)が測定感度以上であれば,悪性腫瘍からのPTHrP過剰産生による。

    血清PTHrPの上昇がなく,血清1,25水酸化ビタミンDが高くない:悪性腫瘍の骨転移や多発性骨髄腫による広範な骨破壊性病変,甲状腺機能亢進症に不動化などが合併した場合にみられる,全身性の骨吸収亢進に伴う高Ca血症の可能性がある。

    広範な骨病変が存在せず血清1,25水酸化ビタミンDが高値:サルコイドーシスや結核症などの慢性肉芽腫症による活性化マクロファージでの活性型ビタミンDの過剰産生や,きわめて稀に活性型ビタミンDを産生する悪性腫瘍による場合がある。

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