□無菌性髄膜炎の大部分はウイルス性である。その80%は8歳以下の小児であり,起因ウイルスは85%がエンテロウイルス(enterovirus:EV)属である。
□成人での報告は非常に少ないが,ヨーロッパからの報告では,同定できたウイルスの約25%はEV,数~10%は単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus:HSV),5~8%は水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)と報告されている1)2)。
□わが国でもEVが最も多いが,次に多いのがムンプスウイルス(mumps virus:MV)である。わが国ではMVに対する定期ワクチン接種が施行されていないためである3)4)。HSV,VZVは各々数%である。
□頭痛,発熱,嘔吐の3徴に加えて髄膜刺激としての項部硬直などの徴候をきたすが,認めないことも多い。脳炎を伴えば意識障害・痙攣・巣症状を伴う。
□尿閉が生じた場合,エルスバーグ(Elsberg)症候群と呼ばれている。加えて,各ウイルス感染症としての全身症状の特徴を示し,鑑別診断として参考になる。
□EVでは消化器症状が強い。MVでは耳下腺腫脹以外に,睾丸炎,膵炎(血清アミラーゼ増加)などを伴うことがある。VZVは免疫能低下状態で帯状疱疹を伴うことが多い。HSVは再発性で性器ヘルペスを伴う2型が多い(表)。
□血液検査では,軽度の炎症所見を示すことはあるが,多くは特徴的所見を示さない。
□髄液検査が重要で,蛋白増多と単核球優位の細胞増多を認める。しかし,急性期は多核球優位で,経過とともに単核球優位となる(表)。
□一般には糖は低下しない。この点が細菌性や真菌性髄膜炎との鑑別に重要である。
□起因ウイルスの同定のため,抗体検査やPCR検査を行うが,すべてのウイルスに網羅的に行うことは現実的ではなく,一般臨床では治療方針と関連するHSV,VZV,MV,インフルエンザなどに対して行う。
□細菌性,真菌性,癌性髄膜炎などを疑う場合は培養検査や細胞診などを行う。
□脳炎や脊髄炎を疑う場合や鑑別診断上考えられる疾患に応じて,画像検査を行うことも重要である。
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