合併症が「冠動脈疾患」であれば、心房細動(AF)例への抗凝固薬(OAC)単剤は、抗血小板薬併用に比べ「心血管系(CV)イベント/死亡」「大出血」とも有意にリスクを抑制する。これはわが国で実施されたランダム化比較試験(RCT)"AFIRE"で明らかになっている。しかし「脳梗塞既往」のあるAF例では話が違うようだ。2月5日からロサンゼルス(米国)で開催された国際脳卒中学会(ISC)にて大阪医療センターの岡崎周平氏と山上 宏氏(研究責任者)が、RCT"ATIS-NVAF"の結果として報告した。
ATIS-NVAF試験の対象は、直近8~365日間に脳梗塞か一過性脳虚血発作(TIA)をきたしたOAC服用AF患者で、かつアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)を合併していた316例である。ただし過去1年間に急性冠症候群を発症/PCI施行、あるいは直近6カ月に大出血をきたした例などは除外されている。全国41施設から登録された。なお当初は400例の登録を予定していた[UMIN000025392]。
これら316例はOAC 1剤と抗血小板薬1剤を併用する「抗血小板薬併用」群とOAC 1剤のみを服用する「OAC単独」群にランダム化され、非盲検下で観察された。OACと抗血小板薬の選択は現場に任された。
平均年齢は77.2歳、男性が72%を占めた。脳梗塞/TIA発症からランダム化まで期間中央値は21日だった。最も多かった合併ASCVDは「アテローム血栓性脳梗塞・ラクナ梗塞または穿通枝領域脳梗塞」(50%超)、次いで「頭蓋内動脈狭窄」「頸動脈狭窄」だった。
・抗凝固療法
「OAC単独」群、「抗血小板薬併用」群とも、OACはアピキサバンが最多(46%と38%)で、エドキサバン(22%と35%)が続いた。抗血小板薬最多はアスピリン(52%)。次いでクロピドグレル(31%)、シロスタゾール(17%)だった。
・1次評価項目
本試験は2年間観察予定だったが、中間解析の結果、早期中止となった。その結果、1次評価項目である「CV死亡・虚血性CVイベント・大出血」リスクは、両群間に有意差を認めなかった(「OAC単独」群:19.6%、「抗血小板薬併用」群:17.8%。ハザード比[HR]:1.10、95%CI:0.64-1.89)。
・2次評価項目
同様に「虚血性CVイベント」と「脳梗塞」「大出血」のいずれも、両群間にリスクの有意な差はなかった。ただし「大出血および臨床的に問題となる出血」リスクは、「OAC単独」群で有意に低かった(HR:0.41[0.21-0.81]。治療必要数[NNT]:10)。
本試験はブリストル マイヤーズ スクイブとファイザーから資金提供を受けて実施された。