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■NEWS 【国際脳卒中学会(ISC)】脳出血既往AF例に対するDOACの有用性は確認されず:RCT"PRESTIGE-AF"

登録日: 2025-02-13

最終更新日: 2025-02-13

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非外傷性脳出血例が経口抗凝固薬(OAC)の適応となる心房細動(AF)を合併していた場合、OACを開始すべきだろうか。小規模ランダム化比較試験(RCT)参加例データメタ解析(COCROACH)では結論が出ていない。そのため大規模RCTが進められているが、その第一弾となるPRESTIGE-AF試験では、DOACによる脳梗塞の有意な減少を認めた一方、脳出血再発リスクも増加するという結果に終わった。25日よりロサンゼルス(米国)で開催された国際脳卒中学会(ISC)にてインペリアル・カレッジ・ロンドン(英国)のRoland Veltkamp氏が報告した。

【対象】

PRESTIGE-AF試験の対象は、非外傷性脳出血発症から14日以上(1年未満)経過した、DOAC適応のあるAF患者319例である。ただし「mRS4」例やAF以外にもDOAC適応のある例、抗血小板薬適応例は除外されている。欧州6カ国から登録された。

【方法】

これら319例は、DOAC「服用」群と「非服用」群にランダム化され、非盲検化で観察された。DOAC選択は主治医に任された。

【患者背景】

平均年齢は80歳弱、女性が35%を占めた。血圧平均値は130弱/75mmHgCHA2DS2VAScスコア平均は4HAS-BLEDスコアは3だった。また脳出血部位は30%lobarだった。

【結果】

1.43年(中央値)の観察期間中、有効性1次評価項目である「脳梗塞(初発)」発生リスクは、DOAC「服用」群で「非服用」群に比べ有意に減少していた(ハザード比[HR]:0.0595%CI0.01-0.36。発生率は0.6%12.4%。治療必要数[NNT]:13/年)。「非服用」群における脳梗塞発生は試験開始直後から観察され、試験終了時まで増加し続けた。

一方、安全性1次評価項目の「脳出血再発」リスクは、DOAC「服用」群における「非劣性」(vs.「非服用」群)を証明できなかった。すなわち、非劣性マージンが「1.735」のところ、「服用」群におけるHR10.995%CI1.95-60.7)だった(発生率は「服用」群:7.0%、「非服用」群:0.6%。害必要数[NNH]:24/年)。「服用」群における脳出血再発は試験開始直後から観察され、試験終了時まで増加が続いた。

そして「全脳卒中/塞栓症・心筋梗塞・心血管系死亡・大出血」を比較すると、DOAC「服用」群におけるHR0.6795%CI0.33-1.36)で「非服用」群と有意差はなかった(発生率は19.2/年 vs. 26.5/年)。

Veltkamp氏はこの試験の結果のみで脳出血既往AF例に対するDOAC有用性を判断するのは適切でないとし、現在進行中のRCT"ENRICH-AF""ASPIRE"の結果、並びにそれらを加えた新たなRCT患者データメタ解析(COCROACH)の結果を待つ必要があると述べた。また同様の患者にDOACではなく、経皮的左心耳閉鎖術の有用性を検討するRCTも進行中だという(STROKECLOSEA3ICHCLEARANCE)。

本試験は欧州連合から資金提供を受けて実施された。また論文はすでに、国際的トップジャーナルにアクセプトされているという。

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