□骨髄炎は骨の感染症である。糖尿病足疾患患者に代表される末梢血管障害を原因とする場合,椎体炎のように血流感染が起きている場合,整形外科術後の合併症など,その病因・病態は多様である。
□治療は長期にわたり,外科的デブリドマンと薬理学,感染症学の理論・原則に則った抗菌薬治療が必要になる。
□発熱と疼痛が特徴である。
□糖尿病足疾患など軟部組織感染症を合併している場合,病変以外の部位を叩打することで介達痛が誘発されると(軟部組織ではなく)骨の病変を疑うというクリニカル・パールがあるが,どこまで妥当性があるかは不明である。
□炎症所見が認められ,CRPと赤沈は高い。特に赤沈70 mm/時以上は陽性尤度比が高い1)。しかし,非特異的なために他の炎症性疾患との鑑別とはならない。
□確定診断は骨生検と培養であり,特に椎体炎などではCTガイド下でこれを行うことが望ましいケースは多い(結核除外も必要なため)。ただし,侵襲性はあるので患者の状態を見極めながら行う。
□血液培養:骨髄炎は血流感染の"結果"にも"原因"にもなるため,抗菌薬投与前の2セットの血液培養は必須である。1セットではコンタミネーション(汚染)を除外しづらく,感度も低い。特に骨生検,培養が不可能な場合は抗菌薬選択上非常に重要である。複数セットの血液培養も保険適用がある。
□創部の培養:清潔部位でない,たとえば皮膚や潰瘍表面のスワブ培養は原因菌と相関しないため,ノイズになるだけなので行わない2)。
□画像では造影MRIが最も感度が高く,また経験値も豊富なため推奨される。CTはMRIが不可能な場合の代替案となる。X線写真は特異度こそ高いが感度に乏しいため,診断方法としてはやや弱い。
□海外では3-phase bone scanが行われることもあるが,日本では一般的ではなく,ガリウムスキャンなど他の核医学的検査も検証不十分である。
□PET-CTは感度が高いため,MRI偽陰性を疑った場合は有用な場合がある3)4)。ただし,高額で保険適用もないため,骨髄炎に対する使用は限定的となる。
□また,腫瘍と区別できないなどの欠点もある。筆者はMRI偽陰性を疑うときは間隔をおいて再検することが多い。1回目に陰性でも時間が経つと陽性になることもある。
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