□一般的に尿道炎とは,男性における淋菌やクラミジアによる性感染症の疾患名である。女性における尿道炎は腸内細菌による細菌感染症であり,症状,治療については単純性膀胱炎に準ずるため,ここでは割愛する。
□男子尿道炎は原因微生物の種類によって淋菌性(Neisseria gonorrhoeae),クラミジア性(Chlamydia trachomatis),非淋菌性非クラミジア性に分類される。
□非淋菌性非クラミジア性の原因微生物として,Mycoplasma genitaliumの病原性が確立している。それ以外にUreaplasma urealyticum等が原因菌の可能性がある。原虫ではTrichomonas vaginalis,ウイルスとしては単純ヘルペスウイルス,アデノウイルスなども原因となる。
□近年,オーラルセックスなどの性行為の多様化により,N. gonorrhoeaeやC. trachomatisによる咽頭感染症が問題となっている。無症状であっても感染源となるため,尿道炎と同時に治療が必要である。
□厚生労働省による定点医療機関における性感染症報告数は,淋菌感染症,クラミジア感染症のいずれにおいても,2001~03年をピークに減少し,2010~14年では,ほぼ横ばいとなっている。
□排尿痛と尿道分泌物を主訴とする。
□淋菌性尿道炎の潜伏期間は性交から2~7日と短く,強い排尿痛,粘稠な膿性分泌物を特徴とし,亀頭部の発赤を伴う。
□クラミジア性および非淋菌性非クラミジア性による尿道炎は,潜伏期間が1~3週間と長く,排尿痛は軽度であり,漿液性尿道分泌物を呈する。
□咽頭感染症は,時に咽頭痛,嗄声,発熱等の咽頭炎症状を呈するが,ほとんどの症例で無症状である。
□迅速診断として,尿道分泌物または尿沈渣のグラム染色あるいは単染色により,グラム陰性双球菌であるN. gonorrhoeaeの有無を確認し,淋菌性か非淋菌性(クラミジア性,非クラミジア性非淋菌性)かを判断する。
□10~20%の症例では,淋菌とクラミジアの混合感染が認められるため,初診時にN. gonorrhoeaeとC. trachomatisに対する検査法を同時に施行する。
□検鏡法に引き続き,薬剤感受性試験を実施できる培養法が推奨される。
□鏡検法,培養法が実施できない場合,(中間尿ではなく)初尿を用いた核酸増幅法による検査を行う。
□核酸増幅法として,SDA法(BDプローブテックETTMクラミジア/ゴノレア),TMA法(アプティマTM Combo2 クラミジア/ゴノレア),realtime PCR法(アキュジーン®m-CT/NG),TaqMan PCR法(コバス®4800システム CT/NG)が使用可能である。
□C. trachomatisの培養は一般的に困難であり,検出には核酸増幅法(上記参照)を用いることが基本である。
□N. gonorrhoeaeおよびC. trachomatisが分離されない場合,非淋菌性非クラミジア性尿道炎と診断する。わが国では,M. genitalium,U. urealyticumのいずれの微生物も保険診療範囲内での検出は認められていない。
□検鏡で動き回る卵円形の原虫を容易に確認できる。検尿沈渣の条件により鞭毛が外れてしまうと遊走性がなくなり発見しにくくなる。
□診断は咽頭スワブまたはうがい液(口腔洗浄液)を用いた核酸増幅法により,N. gonorrhoeaeおよび C. trachomatisの検査を同時に行う。咽頭スワブ検体はSDA法,TMA法,うがい液検体はTaqMan PCR法で検出する。
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