□陰嚢水瘤(精巣水瘤・精索水瘤)とは,精巣鞘膜の壁側と臓側の間に漿液が貯留した状態である。
□腹膜鞘状突起の開存の有無で,交通性と非交通性に分類される。交通性は,腹膜鞘状突起が開存したままの状態で原発性(先天性)であることが多いため,小児例に多い。腹膜鞘状突起の大きさや閉鎖の状態により,いろいろなタイプの水瘤の形成をする(図)。
□脳室腹腔内シャントや腹膜透析,肝硬変などで腹水が過剰となる病態の場合には,腹膜鞘状突起の閉鎖遅延や再開通をきたし,続発性に交通性の水瘤となりうる。
□非交通性の場合は,精巣鞘膜内での漿液の分泌と再吸収の不均衡が病態である。原因は不明であることが多い。続発性であることもあり,軽微な外傷,精巣捻転,精巣上体炎,精索静脈瘤の手術後にみられる(表)。
□基本的に主訴は無痛性陰嚢内腫瘤(陰嚢腫脹)である。交通性の場合,水瘤の大きさは腹腔内の圧力で変化するため,日内変動がみられることも多い。小児鼠径ヘルニアの約20%に陰嚢水瘤を合併するため,小児では鼠径部が隆起したエピソードもある。非交通性で続発性である場合は,その原疾患の症状を呈するため鑑別は容易であることが多い。
□触視診所見:水瘤そのものは,表面平滑で弾性のある腫瘤として触知する。健側陰嚢よりも少し大きい程度もあれば,鶏卵大からテニスボール大と水瘤の大きさは様々である。透光性は多くの症例で確認できる。
□超音波所見:陰嚢内疾患に対して超音波検査は大変に有用である。超音波にて液体成分の水瘤であることを確認できる。水瘤の確認だけではなく,腹腔との交通の有無,水瘤が単房性か多房性かの確認,続発性水瘤をきたす疾患の確認ができる。
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