株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

急性膀胱炎[私の治療]

No.5236 (2024年08月31日発行) P.50

中島耕一 (東邦大学医学部泌尿器科学講座教授)

登録日: 2024-09-02

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 急性膀胱炎は,尿道から逆行性に細菌が尿路(膀胱)に侵入して生じる急性の炎症である。単純性と複雑性に分類されるが,尿路の解剖学的または機能的異常のない,あるいは全身の免疫機能を低下させるような併存症がないものを単純性膀胱炎としている。疫学的には性的活動期(20~40歳代)にある女性に多い。

    ▶診断のポイント

    終末時排尿痛,残尿感,頻尿,尿混濁が特徴的で,血尿を伴うこともある。検尿での膿尿の確認で確定できる。

    発熱を伴うことはない。発熱を伴う場合は尿路実質臓器の感染を疑う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    抗菌薬による加療が主体で,いかに適切な抗菌薬を選択するかが鍵となる。特に初療時は見込みでの投薬になるが,閉経前後での原因菌の疫学的分布が異なることを意識して薬剤選択をする。閉経前はグラム陽性球菌(GPC)の分離率が高いのでキノロン系を基本とする。ただ昨今は,閉経前でもキノロン耐性大腸菌の分離頻度が上昇しつつあり,βラクタマーゼ阻害薬(BSI)配合ペニシリン系薬も考慮に入れる。閉経後はグラム陰性桿菌(GNR) の分離率が高いのでセフェム系を基本とするが,ESBL(extended-spectrum β-lactamase)産生株の分離率の上昇も認められ,BSI配合ペニシリン系薬も考慮に入れる。また,初期治療が不首尾に終わった際の二次治療薬を考慮するために,必ず投薬前に尿培養および薬剤感受性試験を実施する。

    初期治療に用いた薬剤に感受性があるにもかかわらず改善しない場合は,残尿の存在や尿路結石,尿路腫瘍などの併存疾患の存在の有無を検索する。何らかの併存症が存在すれば複雑性尿路感染症の診断となり,膀胱炎症状への対症療法を実施しながら,原疾患の加療が必要になる。

    その他の留意点としては,妊婦と高齢者でよくみられる下剤の服用患者である。妊婦におけるキノロン系の使用は禁忌であるのでセフェム系を選択する。また,下剤であるが,マグネシウムやアルミニウム製剤が含まれていると,キノロン系薬は腸管からの吸収が抑制されるため,キノロン系薬を使用する際は下剤の一時休薬か,あるいはセフェム系の使用を検討する。

    膿尿が改善したにもかかわらず膀胱炎症状を訴える場合は,むやみに抗菌薬の追加投与をせずに,対症療法と下腹部保温といった行動療法を指導する。

    WEBコンテンツ「Dr.松木の内科で診る泌尿器科疾患【膀胱炎】」

    残り877文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
    2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    関連物件情報

    もっと見る

    page top