株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

特集:疫学調査から見る過活動膀胱患者の実態と,QOL向上のための治療

No.5242 (2024年10月12日発行) P.18

吉澤 剛 (日本大学医学部泌尿器科学系泌尿器科学分野准教授)

髙橋 悟 (日本大学医学部泌尿器科学系泌尿器科学分野主任教授)

登録日: 2024-10-11

最終更新日: 2024-10-09

  • このエントリーをはてなブックマークに追加


2002年日本大学医学部医学科卒業。2009年日本大学大学院医学研究科博士課程外科系泌尿器科学修了。米国ピッツバーグ大学医学部泌尿器科リサーチフェロー,駿河台日本大学病院泌尿器科助教,日本大学医学部附属板橋病院泌尿器科助教(医局長)を経て,2020年から日本大学医学部附属板橋病院泌尿器科准教授。(吉澤,写真も)

1 過活動膀胱(OAB)の発症頻度

  • 過活動膀胱(OAB)の有病率は,20歳以上で11.9%,40歳以上で13.8%であり,年齢とともに上昇する。

2 OABの定義

  • OABとは,尿意切迫感を主要症状とし,通常は昼間頻尿および/または夜間頻尿を伴う症状症候群であり,切迫性尿失禁は必須ではない。

3 OABの発症メカニズム

  • OABは,明らかに神経疾患に起因すると考えられる神経因性OABと,それ以外の非神経因性OABに分類され,非神経因性OABが大半を占める。
  • 非神経因性OABは加齢,生活習慣の乱れや関連する異常(高血圧,脂質異常,糖尿病などの代謝異常)に伴う血管内皮機能障害,自律神経系の亢進,全身・局所の炎症,あるいは隣接する腸管の機能的異常が関与している可能性がある。

4 OABの診断

  • OABの診断に必要な評価は,自覚症状の問診,病歴の聴取,OAB症状スコア(OABSS),身体所見・神経学的所見,尿検査,残尿測定である。
  • 症例を選択して行う評価は,OABSS以外の症状・QOL質問票,排尿日誌,尿流測定,台上診(女性),直腸診(男性),尿細菌検査,超音波,血液検査である。

5 OABの治療

  • OABの治療は,行動療法(生活指導,膀胱訓練,骨盤底筋訓練など)と薬物療法(β3受容体作動薬,抗コリン薬)が中心である。
  • 難治性OABに対しては,ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法や神経変調療法である仙骨神経刺激療法(SNM)が適応となる。

1 過活動膀胱(OAB)の発症頻度

(1)代表的な下部尿路症状であるOAB

下部尿路症状は,蓄尿症状(昼間頻尿,夜間頻尿,尿意切迫感,切迫性尿失禁,腹圧性尿失禁など),排尿症状(遷延性排尿,尿勢低下など),および排尿後症状(排尿後尿滴下など)の3つで構成される。尿意切迫感を主要症状とする過活動膀胱(overactive bladder:OAB)は多くの人を悩ませる代表的な下部尿路症状であり,生活の質(quality of life:QOL)の低下に強く関与する。

(2)OABの有病率

日本排尿機能学会では,2023年に下部尿路症状に関する疫学調査を約20年ぶりに行った。OABの有病率は,20歳以上で11.9%(男性13.9%,女性9.8%),40歳以上で13.8%(男性16.6%,女性11.0%)であり,年齢とともに上昇した(図11)。また,最もQOLに影響を与える下部尿路症状は男女ともに夜間頻尿,昼間頻尿,尿意切迫感の順であった(図21)

プレミアム会員向けコンテンツです(連載の第1~3回と最新回のみ無料会員も閲覧可)
→ログインした状態で続きを読む

関連記事・論文

関連書籍

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top