「膀胱に関連する慢性の骨盤部の疼痛,圧迫感または不快感があり,尿意亢進や頻尿などの下部尿路症状を伴い,混同しうる疾患がない状態」の総称で,膀胱内にハンナ病変(正常の毛細血管構造を欠き,遠景としては発赤粘膜として確認される)のあるものを間質性膀胱炎と言い,それ以外を膀胱痛症候群(bladder pain syndrome)と呼ぶ。
蓄尿時の下腹部の痛み,頻尿,尿意亢進を訴えることが多い。膀胱の充満により痛みが強くなり,排尿後に軽快することから蓄尿が不十分でも排尿してしまうことが多く,排尿困難感,残尿感の原因となる。尿意亢進と蓄尿障害から尿失禁の訴えも少なくない。
尿検査は異常所見を認めないことが多く,排尿日誌が有用である。1日を通して1回排尿量が極端に少ない場合は,診断のために膀胱鏡検査が必要である。
「混同しうる疾患」となる尿路結石,前立腺肥大症,子宮内膜症,尿路上皮癌の鑑別を行った上で,膀胱鏡検査にてハンナ病変を認める場合は間質性膀胱炎の診断となる。ハンナ病変がない場合は膀胱痛症候群として加療するが,保険適用となる治療が異なるため注意が必要である。
QOL疾患であり,かつ完治が困難な病気であることから,本人や家族の病気に対する理解と受容が重要と考えている。また,本人の満足度を上げることを目標に多角的な治療を心がけており,極力,患者の要望をくみ取るようにしている。
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