□精索静脈瘤は精巣から心臓に戻る蔓状静脈叢内の血液が逆流し,精巣の周りに静脈瘤が形成される病態である。
□精索静脈瘤ができると血流障害により温度の上昇を引き起こし,また,持続性低酸素症になることにより,造精機能低下や精子のDNA損傷を引き起こす。
□精索静脈瘤は,ライディッヒ細胞機能の低下とも関連していると考えられている。精索静脈瘤の治療を行えば造精機能だけでなくライディッヒ細胞機能も改善する。
□WHOの報告では,9034人の不妊男性の調査で,精液所見が悪い男性の25.6%,精液所見が正常の男性の11.7%で精索静脈瘤が認められた。乏精子症・精子運動率低下の35%は精索静脈瘤が原因で,2人目不妊の78%は精索静脈瘤による進行性精巣障害が原因である。つまり,精索静脈瘤が精子の老化の最大原因となっている。
□精索静脈瘤の90%は左側の陰嚢に発症するが,10%は両側性であり,右側単独発生はきわめて稀である。その背景としては,左精索静脈が右側より長いこと,左精索静脈は左腎静脈に流入し,その流入角度が大きいことから左精索静脈の逆流現象が起こりやすいこと,左腎静脈のナットクラッカー現象,左精索静脈の弁不全が生じやすいことなど,複合的素因が考えられる。
□陰嚢上部での蔓状静脈叢が怒張・うっ血することで陰嚢部の重圧感,不快感,鈍痛を自覚することが多い。精索静脈瘤の多くは特発性であるが,稀に腎腫瘍などの悪性腫瘍が原因となることがあることを銘記すべきである。
□一般的に触診や超音波検査で陰嚢の状態を確認する。以下のGradeに分類する(表)。
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