□血精液症は精液に血液が混じり,精液が鮮紅色から茶褐色を呈する病態である。
□特発性が多く,悪性疾患は稀であるが尿路性器の精査が必要である。
□無治療経過観察が基本であるが,血尿や感染を伴う場合には必要に応じて対症療法を行う。
□代表的な基礎疾患としては,精嚢拡張,前立腺正中嚢胞,射精管閉塞,精嚢アミロイドーシス,尿道海綿状血管腫,尿道前立腺ポリープなどがあるが,多くの場合は原因不明の特発性血精液症である。1年以上継続する慢性血精液症では前立腺正中嚢胞や射精管閉塞などの基礎疾患が検出されることが多い。
□海外からの報告であるが,基礎疾患として血精液症の患者の多くに慢性前立腺炎を認めるとの報告もある1)。
□長期間の禁欲や過度の性交渉や自慰を原因とすることもある。また,前立腺生検後には医原性の血精液症が多い。
□血精液症は精液に血液が混入し,精液が鮮紅色から茶褐色を呈する症候である。精液は精巣から精巣上体・精管を経て移動してきた精子と精嚢および前立腺の分泌液が混ざって成り立っているが,精液の液状成分の大部分は精嚢および前立腺の分泌液が占めているので,出血部位は多くの場合,精嚢あるいは前立腺である。出血の時期が古いと茶褐色を呈し,凝血塊を伴うこともある。逆に比較的新しい出血では鮮紅色となる。一般的に射精時に痛みを伴うことは少なく,痛みがあるときには炎症が疑われる2)。
□精液に出血するという症状はインパクトが大きく,悪性疾患,性感染症,不妊症,勃起不全など様々なことを心配して受診することが多い。
□血精液症は,通常,数週間以内あるいは数回以内のエピソードで自然に軽快消失するが,1年以上持続する慢性例も少数であるが存在する3)。
□血精液症の多くは精嚢および前立腺などの精路に原因があるが,前立腺部尿道より末梢側は尿路と精路は共通の経路を用いているため,精路にのみ問題のある血精液症であるのか,血尿も合併した下部尿路に異常があるのかを検討する必要がある。
□理学的所見として,陰嚢,精巣,精巣上体,前立腺の診察を行う。
□検尿,尿細胞診,精液の細胞診,経直腸的前立腺超音波検査,PSA採血などで悪性所見の基礎疾患の有無を確認する。MRIは精路の画像診断に有用である。尿道膀胱鏡は尿道から膀胱内の観察には有用である。
□すべての血精液症患者にこれらの検査を行う必要はないが,年齢や随伴症状,患者の希望などを考慮して検査を進めていく。血精液症が長期間持続する場合や40歳以上,排尿障害,疼痛,発熱を伴う場合には精査が必要である。
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