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尿失禁[私の治療]

No.5227 (2024年06月29日発行) P.41

鳥本一匡 (奈良県総合医療センター泌尿器科部長)

後藤大輔 (奈良県立医科大学泌尿器科学講座)

藤本清秀 (奈良県立医科大学泌尿器科学講座教授)

登録日: 2024-06-28

最終更新日: 2024-06-25

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  • 尿失禁とは,尿が不随意に漏れるという愁訴である。尿失禁は主に,切迫性,腹圧性,持続性,機能性,溢流性に分類される。切迫性尿失禁は,尿意切迫感(急に起こる,我慢することが困難な尿意)に伴うもので,過活動膀胱の症状である。腹圧性尿失禁は,労作時または運動時,もしくはくしゃみまたは咳の際に現れる。持続性尿失禁は,尿道括約筋の欠損や損傷,尿管異所開口,尿路と腟の交通(尿管腟瘻,膀胱腟瘻)などに伴う。機能性尿失禁は,身体的または認知症など精神的な障害のために,通常の時間内にトイレに到達することができない状態である。溢流性尿失禁は,過剰な膀胱充満により生じる。

    ▶診断のポイント

    溢流性尿失禁,すなわち残尿量が非常に多い状態を除外すれば,前述した特徴から尿失禁の病態を判別できる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    まず自覚症状の問診を行い,尿失禁の病態の見当をつける。この際,「主要下部尿路症状質問票(core lower urinary tract symptom score:CLSS)」は下部尿路症状を包括的に評価できるため,有用である。尿検査で膿尿または血尿があり,原疾患として尿路感染や尿路結石,尿路悪性腫瘍を確認すれば,その治療を優先する。通常は超音波走査で残尿を測定し,溢流性尿失禁と診断する場合(目安として300mL以上)には尿排出を目的とした治療を行う。

    切迫性尿失禁,すなわち過活動膀胱の診断には,「過活動膀胱症状質問票(overactive bladder symptom score:OABSS)」が有用である。尿排出症状(尿勢低下や腹圧排尿など)を伴う場合,男性では前立腺肥大症,女性では骨盤臓器脱(膀胱瘤や子宮脱など)の合併を疑い,それらが存在すれば並行して対処する。

    腹圧性尿失禁は主に女性にみられ,一般に高齢では混合性尿失禁(腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁の双方がある状態)の頻度が高い。腹圧性尿失禁だけの場合,腹圧がかからない就寝中には症状はない。蓄尿状態(目安として200mL以上)で砕石位として咳や腹圧をかけさせ,尿が漏出すれば確実に腹圧性尿失禁である。

    持続性尿失禁には重症例が多く,原因に応じた手術療法が必要であるため,専門医への紹介が推奨される。機能性尿失禁には,看護および介護を中心に対処する。リハビリテーション,住環境の整備,排泄誘導など個別に相談して,適切な方法を検討する。

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