□耳硬化症は進行性伝音難聴を呈する非炎症性のアブミ骨固着疾患である。内耳を含む耳嚢(otic capsule)に海綿状骨増殖をきたし,アブミ骨底部に位置する輪状靱帯まで病変が及ぶとアブミ骨の固着を生じ,伝音難聴に至る。
□病変の進行が蝸牛内まで波及すると内耳障害をきたし,混合難聴を呈する。疫学的には女性にやや多く,難聴は30~40歳代で発症のピークを迎える。
□人種による発症率に差を認め,日本人と比較して圧倒的に白人に多い疾患である。
□後天的に発症し,緩徐に進行する難聴が主な症状である。
□難聴は両側性であることが多いが,片側性または片側性の時期を有する症例も存在する。
□耳鳴を伴うことも多く,70~80%の症例で認められる。
□めまいを訴える症例もあるが,頻度は高くない。
□耳鏡検査:鼓膜は正常である。時に鼓室岬角粘膜の血管増生により鼓膜中央部が赤く見える現象(Schwartze徴候)を認めることがある。
□純音聴力検査(図1):stiffness curve(高音域に比較して低音域の気骨導差が大きい)を伴う伝音難聴または混合難聴がみられる。2kHzの骨導閾値上昇(Carhart's notch)は耳硬化症に特徴的な所見であるが,先天性アブミ骨固着症でも認められる。
□ティンパノグラム:As型が特徴的とされるが,A型のことも多い。
□アブミ骨筋反射:反射の欠如を認める。時にon-off反応がみられる。
□側頭骨CT:マルチスライスCTにて,fenestral typeでは卵円窓前方のfissula ante fenestram付近に脱灰像を認める。一方,retrofenestral typeでは,蝸牛周囲の骨吸収像によるdouble ring sign(図2)が認められることがあり,本疾患に特徴的な画像所見である。
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