□前庭神経炎は,聴覚症状を伴わない単発性の突発性回転性めまいを主症状とする疾患である1)。男性にやや多く,発症年齢は50歳代に多い。上気道感染の先行する症例が多く,ウイルスによる前庭神経の障害が示唆されてきたが,証明されていない。
□前庭神経節に潜伏完成している単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の再活性化により前庭神経炎が発症するとの説が提唱されている。しかし,抗ヘルペス属ウイルス薬であるバラシクロビルは前庭神経炎に対して効果がない。前庭神経炎では上前庭神経障害が最も多いが,上および下前庭神経がともに障害されている症例もあり,さらに内耳前庭が障害されて発症する症例もある。また,下前庭神経のみが障害される症例も存在する。
□突発的な回転性めまい発作で発症する。回転性めまい発作は1回のことが多い。回転性めまいは1日~3日間持続する。回転性めまいが軽快した後も,体動時あるいは歩行時のふらつき感が長期間持続する。しかし,めまいに随伴する難聴,耳鳴,耳閉塞感などの聴覚症状を認めない。また,第Ⅷ脳神経以外の神経症状がない。
□回転性めまい発作時に,自発および頭位眼振検査で健側に向かう水平性または水平回旋混合性眼振を認める。
□温度刺激検査:前庭神経炎の診断と患側の決定に重要である。温度刺激検査により一側または両側の半規管麻痺(canal paresis:CP)を認める。
□聴力検査:正常聴力またはめまいと関連しない難聴を示す。さらに,前庭神経炎と類似のめまい症状を呈する内耳・後迷路性疾患,小脳,脳幹を中心とした中枢性疾患など,原因既知のめまい疾患を除外できる。
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