□舌炎には,萎縮をきたす舌炎と,構造に異常をきたす舌炎とがある。萎縮をきたす舌炎には,①萎縮性カンジダ症に伴う正中菱形舌炎,②鉄欠乏性貧血(Plummer-Vinson症候群)に伴う舌炎,③悪性貧血に伴うHunter舌炎,④口腔乾燥症に伴う舌炎がある。構造に異常をきたす舌炎には,地図状舌と溝状舌がある(「§19-3 地図状舌・溝状舌」参照)。以下,萎縮をきたす4つの舌炎について解説する。
□舌背中央~後方部,分界溝前方にみられる左右対称性の赤みを帯びた斑。
□原因はカンジダ菌の局所感染。
□症状は無症状,時に軽度の疼痛(しみる感じ)や違和感。
□病変部の糸状乳頭の消失が特徴。
□舌尖部,舌縁部の糸状乳頭の萎縮による赤平舌を呈する。
□舌炎,口角炎,口内炎によって強い灼熱感や刺激痛(接触痛)を伴う。
□爪は薄くなり,平坦化し,匙状爪(スプーン状爪)を呈する。
□易疲労感,動悸などの貧血症状。
□好発年齢:中年以降の女性。
□舌乳頭の萎縮,舌の発赤,灼熱感の3徴候をHunter舌炎と呼ぶ。
□原因は,ビタミンB12の欠乏。
□問診で胃切除,萎縮性胃炎(Helicobacter pylori感染)の既往が診断のポイント。
□舌の乾燥感や疼痛,唾液の粘稠感,口腔不快感,味覚異常(酸っぱい,苦い),口臭。
□原因は,唾液分泌量の低下。
□カンジダ菌の培養検査が必須である。綿棒あるいはデンタルミラーを用いて病巣部を10回程度擦過し,寒天培地に塗布する。カンジダ簡易検査も有用である。
□口腔カンジダ症ではCandida albicansが主たる起炎菌で,全体の90%前後を占める。
□血液検査において,赤血球数・ヘモグロビン(Hb)・平均赤血球容積(MCV)・平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)・血清鉄(Fe)の低下がみられる。食道粘膜の萎縮性変化に伴う嚥下障害もみられる。
□血液検査において,赤血球数・ヘモグロビン(Hb)・ヘマトクリット(Ht)・血清ビタミンB12の低下がみられる。平均赤血球容積(MCV)は高値を示し,平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)は正常値である。
□口腔乾燥症の検査にはサクソンテストとガムテストがある。サクソンテストは,乾燥したガーゼを2分間一定の速度で噛み,ガーゼに吸収される唾液の重量を測定する。ガーゼの重量が2g/2分以下で陽性と診断する。ガムテストは無味のガムを10分間噛み,その間に分泌された唾液を小容器に集め測定する。10mL/10分以下の場合,陽性と診断する。
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