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羊水過多・過少

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-25
金西賢治 (香川大学医学部附属病院周産期科女性診療科)
秦 利之 (香川大学医学部母子科学講座周産期学婦人科学教授)
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  • ■疾患メモ

    羊水は妊娠期間を通じて胎児と胎盤を含む卵膜表面からの産生と吸収の循環を繰り返し,ある一定量を維持している。胎児の骨格,筋肉の発達のみならず,肺や消化管などの臓器形成にも重要な役割を果たしている。

    産生と吸収の循環バランスの破綻が羊水過多や羊水過少を発症させる。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    羊水は妊娠初期で主に絨毛膜,羊膜から産生され,妊娠4カ月半ば頃より,産生の主体は胎児の尿および肺胞分泌物になってくる。羊水量を規定する因子は,この胎児尿などからの産生と,胎児の嚥下や羊膜からの吸収による循環のバランスと考えられている。

    基本的には胎児の嚥下による吸収が減ると羊水過多が,排尿低下などでは羊水過少が引き起こされる。

    〈羊水過多症〉

    妊娠の時期に関係なく,羊水量800mL以上が羊水過多で,臨床定期に何らかの自他覚症状を伴う場合を羊水過多症と定義されている。羊水過多をきたす原因には母体因子と胎児因子が考えられる。

    母体側因子では,糖尿病合併妊娠,妊娠糖尿病があり,胎児側因子では横隔膜ヘルニア,先天性嚢胞性腺腫様肺奇形(congenital cystic adenomatoid malformation:CCAM),上部消化管通過障害,染色体異常,臍帯ヘルニア,中枢神経系異常,筋骨格系異常(筋強直性ジストロフィーなど),双胎間輸血症候群,胎児腫瘍や胎盤腫瘍などが挙げられる。

    しかしながら,最も多い原因としては特発性(原因不明)が挙げられ,全体の60%を占める。ついで胎児奇形に関するものが19%,多胎妊娠が7.5%,母体糖尿病が5%,そのほかの原因で起きるものが8.5%の順である1)

    〈羊水過少症〉

    羊水の量が異常に少ない状態を指す。定量的な定義はなく,一般的に羊水量が100mL以下を羊水過少(症)としている。

    妊娠中期はじめから羊水過少を呈する場合は,原因として,胎児腎尿路系の器質的異常(ポッター症候群などの腎臓低形成),胎児尿産生の機能的な減少などの胎児因子が挙げられ,そのほかに利尿薬,非ステロイド性抗炎症薬の母体への投与など薬剤性の原因も考えられる。

    妊娠中期以降では,前期破水での流出による減少が約半数を占める2)

    【検査所見】

    日常の診療では,実際の羊水量を計測することは不可能のため,以下の超音波法を用いて半定量的に羊水量を判断することが一般的である。

    羊水ポケット(amniotic pocket):超音波プローブを子宮壁に対して垂直に当て,羊水腔内に胎児部分や臍帯を含まない最大円を描き,その直径を羊水ポケットとする。一般的に8cm以上を羊水過多とし,2cm未満を羊水過少とする3)

    maximum vertical pocket(MVP):羊水腔が最も広く描出される部位を選び,子宮内壁からの最も深い羊水深度を計測する。羊水ポケットの計測と同様に,8cm以上を羊水過多,2cm未満を羊水過少とする2)4)

    amniotic fluid index(AFI):妊婦を仰臥位とし,妊娠子宮を腹壁体表面上で4分割し(),それぞれ4箇所の羊水腔の最大深度を計測し,その総和をAFIとする。このとき胎児部分や臍帯を含まない部分を計測する。24cm以上を羊水過多,5cm未満を羊水過少とする5)6)

    21_08_羊水過多・過少

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