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妊娠高血圧症候群[私の治療]

No.5243 (2024年10月19日発行) P.51

大口昭英 (自治医科大学産科婦人科学講座教授)

登録日: 2024-10-21

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  • 妊娠高血圧症候群は,慢性高血圧,妊娠高血圧腎症,加重型妊娠高血圧腎症,および妊娠高血圧の総称である。入院での管理および早期の娩出を考慮するのは,慢性高血圧の増悪,重症の妊娠高血圧腎症・加重型妊娠高血圧腎症・妊娠高血圧である。妊娠20週以降の重症高血圧は降圧薬の適応となる。

    ▶診断のポイント

    血圧レベル,蛋白尿,母体の臓器障害,胎盤機能不全の組み合わせによって,慢性高血圧,妊娠高血圧腎症,加重型妊娠高血圧腎症,および妊娠高血圧と診断される。妊娠高血圧腎症,妊娠高血圧は,産褥12週までに上記症状が消失したものを言う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    慢性高血圧については,白衣高血圧との鑑別が必須である。最終診断が白衣高血圧であれば,降圧薬は必要ない。一方,最終診断が慢性高血圧であれば,妊娠中の降圧目標を<130/85mmHgとしたい1)。妊娠中に血圧レベルが増悪したり,加重型妊娠高血圧腎症を発症したりした場合も,その降圧目標値を130/85mmHgとして管理する1)。妊娠中はアンジオテンシン変換酵素阻害薬,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬を使用せず,カルシウム拮抗薬(アムロジピンあるいはニフェジピン),αβ遮薬(ラベタロール),血管拡張薬のヒドララジン,あるいは中枢性交感神経抑制薬のメチルドパを組み合わせた治療を行う。

    妊娠高血圧腎症,妊娠高血圧については,我々の施設では,血圧≧160/100mmHgで降圧を開始し,降圧目標を130/85mmHg程度に置いている。妊娠中はアンジオテンシン変換酵素阻害薬,アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬を使用せず,カルシウム拮抗薬(アムロジピンあるいはニフェジピン),αβ遮断薬(ラベタロール),血管拡張薬のヒドララジン,あるいは中枢性交感神経抑制薬のメチルドパを組み合わせた治療を行う。なお,血圧≧160/110mmHg以上を示し,緊急の降圧を必要とする場合は,ニカルジピン塩酸塩注射液10mgを10倍稀釈し,15mL/時より点滴静注を開始し,適宜増減する。

    分娩終結が近い場合,または急速遂娩となった場合などで,子癇の発症リスクが高いと判断される状況では,マグネゾール(硫酸マグネシウム水和物)40mL(4g)を20分かけて静脈内投与し,続けて10mL(1g)/時で持続静脈内投与を開始する。通常,分娩後24時間まで投与を持続する。

    妊娠高血圧症候群では,血圧のコントロールが不良,母体の臓器障害の増悪,胎盤機能不全の増悪,および胎児機能不全(レベル4,5)がみられた場合は,妊娠終結を考慮し,急速遂娩あるいは陣痛誘発を計画する。

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