子宮破裂とは,妊娠中または分娩中に起こる子宮壁の裂傷のことで,その頻度は約3000分娩に1例と言われているが,母児ともに重篤な状態に陥る疾患である。既往帝王切開後など瘢痕子宮に起こることが多く,非瘢痕子宮での自然子宮破裂の発生頻度は1万5000分娩に1例と稀である。裂傷の程度により,子宮筋層から漿膜までが完全に断裂した「完全子宮破裂」と,子宮漿膜や広間膜に裂傷が及ばない「不全子宮破裂」に分類される。
子宮破裂の徴候として胎児心拍数異常,異常な疼痛,子宮体下部収縮輪(Bandl収縮輪)の上昇,分娩中の異常出血などが挙げられるが,破裂の程度や部位により多彩な症状を呈する。特に臓側腹膜が保たれる不全子宮破裂では,症状が非典型的で軽いことが多いため診断が困難である。大量の外出血や腹腔内出血をきたして母体がショック状態に至ることもあるため,バイタルサインの確認や腹腔内出血の評価も要する。
術前診断は困難で,分娩前であれば緊急帝王切開術を施行した際に,破裂部位や腹腔内出血を認識することがほとんどである。分娩後であれば子宮下部から頸管や円蓋部に及ぶ裂傷となることがあるため,内診や腟鏡診で外出血の有無や裂傷の有無を確認する。必要に応じて造影CTなども検討する。
母体が出血性ショックに至る可能性があるため,早期からの全身管理が重要となる。基本的に開腹手術が必要となり,分娩前であれば緊急帝王切開術で胎児と胎盤を速やかに娩出させる。その後,裂傷部を確認して止血・修復を行い,修復が困難と判断した場合は子宮全摘出術を選択する。
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