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産褥乳腺炎[私の治療]

No.5284 (2025年08月02日発行) P.54

長谷川ゆり (長崎大学産婦人科准教授)

三浦清徳 (長崎大学産婦人科教授)

登録日: 2025-08-05

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  • 乳腺炎は授乳中に誰にでも起こりうる炎症性疾患である。多くは産後1週~2カ月以内にみられ,乳房の一部または全体の発赤,熱感,腫脹,自発痛,圧痛や所属リンパ節の腫脹を呈し,これらの症状による全身状態としては発熱,悪寒を伴うことがある。乳管の閉塞,つまりがあればこれらの症状は起こりうる。必ずしも感染が存在するとは限らないが,乳腺組織の腺または間質の細菌感染や,乳頭からの感染により発症することもある1)。感染を伴わない場合には授乳や搾乳といった乳房ケアが,発熱がみられる場合には解熱鎮痛薬の投与などの対症療法が中心となる。しかしながら,感染を伴う感染性乳腺炎と診断した場合には抗菌薬の投与が必要である。さらに抗菌薬投与でも改善を認めず,乳腺膿瘍を形成した場合には,外科的介入として切開排膿が必要になることもある。

    ▶診断のポイント2)

    乳腺炎以前の状態としては緊満,乳管閉塞,乳頭上の白斑がある。全身状態は良好であり,発熱を認めたとしても38.4℃以下であることが多い。しかしながら,以下の診断に至る場合には全身状態に影響が及ぶ。

    • 非感染性乳腺炎:授乳中,特に乳汁うっ滞時には急速に発症する。斑状または筋状の発赤や軽度熱感を伴い,疼痛は弱く,限局性である。発熱は38.4℃以下であり,気分不快を呈することもある。
    • 感染性乳腺炎:通常産後10日以降に突発的に起こる。発赤,熱感があり,強い疼痛を伴う。発熱は38.5℃以上である。関節痛や悪寒を認める。
    • 乳腺膿瘍:感染性乳腺炎に続き発症する。発赤,熱感があり,強い疼痛を伴う。発熱は38.5℃以上である。悪寒,全身倦怠感を認める。

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