□吃音(stuttering)は,発達性,神経原性,心因性を区別するが,ほとんどは小児期に発症する発達性である。発達性吃音は遺伝要因が強く,吃音診断原因説は否定されている。
□2~7歳に好発し,幼児の5%に発症する。幼児期は自然回復も多いが,学童期以降は遷延・悪化しやすい。成人は1%弱の有症率で,男女比は4:1となる。状況依存性と変動(波)があり,独り言や歌ではほぼ吃らない。
□治療によっても家族以外とは音声で意思伝達できないほどに重症であれば,身体障害者4級に該当する。発達性吃音は発達障害者支援法によって精神障害者保健福祉手帳が交付できる可能性がある。
□吃音は,発声,呼吸,構音器官に器質的な問題を認めず,これらの協調運動障害である。吃音に特徴的な中核症状として,①音韻や単語の一部の連続3回以上の繰り返し,②音韻の引き伸ばし,③阻止(言いたい音や言葉が出ない,ブロック,難発とも言う)があり,6カ月以上にわたって合計で3%以上の文節にみられることで診断する。
□参考所見として,発話に伴う口,顔面(瞬目,視線をそらす,渋面等),そのほかの身体部位の随伴運動や情緒反応がある。学童後期以降は,間投詞の挿入,単語の言い換えや迂言,早口,そのほかの発話の工夫が多くなる。吃音を隠そうとして発話や発話場面の回避が出現すると,社会参加が不良になる。
□最大発声持続時間(maximum phonation time:MPT)や音声ディアドコキネシス等で,基礎的発声・構音能力をみる。吃音検査法に加えて,電話等の苦手場面や苦手な単語でも症状を観察する。
□心理面の把握のため,青年期以降では,OASES,LSAS,PHQ-9等の問診票も有用である。
□早口言語症,薬剤副作用(リタリン®等),チック,場面緘黙症,構音障害がある。青年期以降は,けいれん性発声障害,過緊張性発声,音声振戦,脳損傷,失語症も鑑別する必要がある。
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