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せん妄

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-03-28
大坪天平 (JCHO東京新宿メディカルセンター精神科主任部長)
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  • ■疾患メモ

    せん妄(delirium)は,急性かつ一過性に出現する,可逆性の意識障害,あるいは意識の変容,と定義される。

    認知症が神経細胞の脱落や変性によって生じる脳機能低下により,数カ月から数年にわたって徐々に進行する疾患であるのに対し,せん妄は数時間から数日単位で出現し,意識障害を中核症状とする可逆的な神経認知障害群である。

    急性の発症と症状の動揺,注意力の欠如,思考の錯乱,意識レベルの変化を認めた場合,せん妄を疑う。

    せん妄は,物質中毒せん妄,物質離脱せん妄,医薬品誘発性せん妄,他の医学的疾患によるせん妄,複数の原因によるせん妄にわけられる。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    せん妄の代表的症状は,意識障害,注意障害,感情の易変性,睡眠覚醒リズム障害,認知機能障害,知覚障害,思考障害,精神運動抑制,などである。

    臨床的には,普段できた判断のスピードが落ち,正確さが失われ,ぼんやりして指示が入らず,作業の継続が困難で,突然怒り出したり,日中傾眠傾向である一方,夜間大騒ぎをする,などが観察される。

    さらに見当識障害や発語・書字不能となり,幻視を中心とした幻覚,妄想,焦燥,興奮を認めたり,逆に活動性の低下を示す場合もある。

    せん妄は,過活動型,低活動型,さらに直前の24時間に過活動型と低活動型の両方を示す混合型にわけられる。

    【検査所見】

    病歴,身体所見,検査所見,近親者から聴取した生活歴などから,身体疾患の罹患や治療の有無,薬剤の曝露や物質中毒などが単独または複合して引き起こされているという証拠を見つける。そのためには,血液・尿検査,心電図,胸部X線などに加えて,頭部CTあるいはMRIが必要となることもある。

    身体診察では,感染症や脱水など,せん妄の原因となる病態の徴候,神経学的検査,および注意力,短期記憶,長期記憶,物品名呼称,作文,図形描写などの検査も行い,その日内変動の有無に注意する。

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