Level 1 ▶本コンテンツの対象となる医師.内科の開業医で,子どもから両親・祖父母まで家族全体を診療の対象とし,地域の親切な先生と慕われ,クリニックの看板が「内科→小児科」の順になっている医師.
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Level 2 ▶『子どもの病気ホームケアガイド』(医歯薬出版)レベル.小児科で見られる代表的な疾患等に関する案内書.この本の内容が理解でき,クリニックの看板が「小児科→内科」の順になっている医師.
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Level 3 ▶『今日の小児治療指針』(医学書院)レベル.現在16版を数え,重要な小児疾患600余りの標準的治療が記載されている.この本の内容が病態を含めて理解でき,診断・治療が可能な医師.
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Level 4 ▶小児科専門医試験合格レベル.日本小児科学会HPの小児科専門医向けの演習問題を解ける医師.小児科学会会員で小児科医として知識に自信のある方は挑戦してみて下さい.
1歳6カ月の男児.成長発達の遅れを心配した母親に連れられて来院.在胎34週,出生体重2380g.生後,頸定4カ月,座位8カ月,ひとり歩き16カ月.現在,「パパ,ママ」など2,3語が言える.母親の言うことを理解し,絵本の指差しができる.身長77.4cm,体重9720g.大泉門は閉じている.生歯12本.
問題:この児の発育・発達について,どのように考えますか?
a.やせである
b.低身長である
c.乳歯萌出が遅れている
d.言語発達が遅れている
e.運動発達は正常である
e
解説:運動発達が少し遅いように思えるが,出生日からではなく出産予定日からの修正月齢で評価すると,発育・発達ともに正常なお子さんである.(99回医師国試を基に作成)
通常は,子どもを診察する前にカルテに記載された生年月日から年齢・月齢を確認しますが,今回は生年月日を見ずに,まず診察室に入ってきた子どもの様子を見て,感じて,話しかけて年齢・月齢,さらには体重を予想してみましょう.さあ真剣勝負です!!
子どものおおよその発達年齢(何カ月,何歳ぐらいか)と体重を予想しながら,医療面接を進める.そして,診察後半で母親に子どもの年齢・体重を聞いて,鍛錬する.ある程度自信がついてきたら,母親に聞かずに年齢・体重を伝えてみる.予想が見事に当たると,母親は感心する.大きく外れると恥ずかしいが,母親は笑ってくれることが多い.つまり,「目の前の子どもを,測らずして見(はか)る」のである.まず自分の外来で始め,次は街角,電車の中,ファミレスなど,目の前に現れた子どもの発達年齢・体重を評価する.
発達年齢は子どもの姿勢で分かる
子どもの発達年齢の分かりやすい判断方法は,姿勢に注目することである(図1).
①1歳までの乳児の場合は母親に抱かれている姿勢で評価
・ 2カ月児 : 首がまだすわっていないので,母親が頭を支えている
・ 4カ月児 : 首がしっかりして,座ってこちらをじっと見て笑う
・ 6カ月児 : お座りができて,近づくと人見知りが見られる
・ 8カ月児 : しっかり座れて手を出してくる
②1歳からは歩く様子で評価
・ 1歳児 :やっと歩ける
・ 1歳半児:上手に歩ける
・ 2歳児 :駆け出す
③2歳からは子どもとの会話がヒントに
・ 2歳児 : お歌の一部が歌えて,踊れる
・ 3歳児 : お歌が数曲歌えて,自分の名前や家族の名前を答えることができる
・ 4歳児 : ジャンケンやしりとりができる
・ 5歳児 : なぞなぞ遊びができる
a. 2カ月児,b. 4カ月児,c. 6カ月児,d. 8カ月児,e. 11カ月児
このほか,発達に関する質問は,母子健康手帳から採用する(手帳の左頁の問診項目を覚えて質問する)と発達年齢の評価に役立ち,乳児健診でもスムーズに使えるようになる.
以上のような子どもの発達年齢と体重の予想を3カ月間してみる.乳児の体重は1kg前後,発達年齢は2カ月前後の誤差で,幼児の体重は2㎏前後,発達年齢は6カ月前後の誤差で評価できれば十分である.これがほぼできるようになると,外来で軽度発達障害児,発達遅滞児,発達の早い子ども,大柄・小柄・低身長が自然に見えてくる.
子どもの発育・発達に習熟する上で,子どもの成長の特質を知ることも重要な要素である.「母乳肥満」をご存じだろうか.これは母乳栄養で育っている乳児で,母親の母乳分泌がとても盛んなケースで見られる.
出生体重は3㎏と標準の大きさで生まれたが,1カ月で4〜5㎏,4カ月で7〜8㎏になった赤ちゃん.「まるまると太った立派な赤ちゃんね」と言われるならばまだよいが,親戚のおばちゃんなどからは「大丈夫? こんなに太っちゃって,少しメタボなんじゃないの?」と言われることもある.
こんな赤ちゃんがあなたの外来に来た時,お母さんにどんな言葉をかけますか?
a.離乳食の開始を少し遅くしましょう
b.母乳を控えて麦茶を飲ませましょう
c.夜間の授乳を少なくしましょう
d.時々吐くようなので,一度専門医に診てもらいましょう
e.この子は太った大人にはなりません,背の高い大人になります
e
このような赤ちゃんは母乳を1回に300cc以上,1日に1.5ℓ近く飲む.母乳をたくさん飲むので少し吐きやすいところもあるが,健康な乳児である.今後,離乳食を1日3回食べるようなり,それにつれて母乳を飲む回数が少なくなっていく.そして,よく歩くようになる2歳頃には,太った子どもから大柄な子どもに徐々に変身していく.赤ちゃんの時に太っているから,大人になるとメタボになりやすいというわけではなく,将来メタボになる割合はほかの子どもと同じである.
母乳が十分出ている場合は離乳食の前に離乳準備食(果汁,麦茶,重湯)を与える必要はない.満足するだけ母乳を飲ませて,5カ月になったら前期離乳食(ドロドロベタベタのムース状の野菜の裏ごし)を始める.
子どもは大人のミニチュアではない.子どもには子どもの発育・発達の特徴があるということを自覚しながら接することが,より適切な診療やアドバイスにつながる.
Column こだわりの逸品①:聴診器─こんな聴診器はいかがですか?
聴診器を持って子どもに近づくと,泣き出すことが多いもの.そこで,子どもに直接触れる聴診器にこんな工夫をしてみませんか(写真)? 子どもの視線はアンパンマンやしょくぱんまんに釘付けです.材料は市販のアンパンマンシリーズのキャラクター人形です.定価540円です.人気はアンパンマン,しょくぱんまん,メロンパンナちゃんです.間違ってもばいきんまんとホラーマンは使用しないで下さい.
【作り方】
①人形を頭部,体に分ける.
②頭頂と体の上下の3カ所に直径6mmの穴をカッターやハサミで開ける.
③聴診器の先端部を外し,頭部側から足に向かって3カ所で管を通して,元に戻すとできあがり.私は清潔感のあるしょくぱんまんが好きです.