第9回では,人材採用においてクリニックの魅力を求職者に伝えることの重要性を説明し,その具体的な方法として「働きやすい職場であること」「地域と連携したクリニックであること」をアピールすることを紹介しました。第10回では少し視点を変えて,クリニックのブランディングと,それを生かしたデジタルでの求人について解説します。
第9回よりも第10回の内容のほうが難しいということはありません。むしろクリニックや人材採用の担当者によっては,今回ご紹介するような取り組み方のほうが得意だということもあるでしょう。始めやすい,やりやすい方法から試して頂ければ大丈夫です。もちろん可能であれば,第9回と第10回の内容を両方実践できると,いっそう大きな成果を期待できるでしょう。いずれにしても,人材採用の取り組みの結果はすぐに出るものではありません。地道に気長に戦略的に,継続してやっていきましょう。
第9回では,クリニックのビジョンとコンセプトを明確にすることから始めましょうと説明しました。今回はさらに進んで,クリニックのブランディングとポジショニングについて考えてみましょう。
ブランディングとは,クリニックのブランドとしての価値を高め,患者や地域にクリニックを認知してもらうための取り組みです。本連載は人材採用がテーマですので,ここでは求職者にクリニックを認知してもらうことを目的とします。クリニックのブランディングを強化し,他院と差別化するための要素としては,表1のようなものが考えられます。
一方で,ポジショニングとは,競合クリニックと比較した際に,自院がどのような独自性を持つのかを明確にすることです。たとえば,「地域の患者に対して,どのような価値を提供できるか?」「求職者が“このクリニックで働きたい”と思えるようなポイントはあるか?」といった視点から考えることができます。
ブランディングを強化してクリニック自身の価値を高め,ポジショニングによって相対的な価値も認識できるようにし,それをホームページ,SNS,求人広告などを通じて一貫性のあるメッセージとして発信することが重要です。