著: | 川上忠孝(新小山市民病院副院長・神経内科部長) |
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判型: | A5判 |
頁数: | 168頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2019年07月26日 |
ISBN: | 978-4-7849-4837-6 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
1章 発症前〜非運動症状期のパーキンソン病
1.パーキンソン病の定義と診断
2.神経変性疾患としてのアルツハイマー病とパーキンソン病
3.発症前診断は可能か?
4.早期診断の方法はあるか?
2章 パーキンソン病の鑑別診断
1.変性疾患:多系統萎縮症,進行性核上性麻痺,大脳皮質基底核症候群等
2.非変性疾患:正常圧水頭症,血管性パーキンソニズム,薬剤性パーキンソニズム
3章 早期パーキンソン病(honeymoon period)の治療
1.基礎的事項:大脳基底核とドパミン
2.早期パーキンソン病に対する基本的考え方:L-ドパか,アゴニストか,それともMAO-B阻害薬か?
4章 中期パーキンソン病の合併症への対策
1.運動症状の合併症
2.非運動症状の合併症
3.薬物治療以外の治療法
5章 高度進行期のパーキンソン病
1.パーキンソン病と認知症
2.進行期の治療方針
3.パーキンソン病での公的支援制度・医介連携
皆さんよくご存じのように,1817年にJames Parkinsonが“An Essay on the Shaking Palsy”を著してから既に200年以上の年月が経ち,2018年には『パーキンソン病診療ガイドライン2018』が日本神経学会から発刊されました。パーキンソン病という疾患の研究が進むにつれ,その発症メカニズムや症状・診断・治療方法はもとより,最近では嗅覚障害やREM睡眠期行動障害などが発症前症状として広く認知されるようになってきています。以前のような「この病名ならばこの薬」という時代は過去のものとなり,ガイドライン自体も2011年の「治療ガイドライン」から,現在は「診療ガイドライン」という名称となり,治療のみに主眼を置くのではなく,より全人的視点でパーキンソン病の診療にあたれるようにまとめられたと感じています。
“Parkinson’s complex”と表現されるように,我々がみているパーキンソン病の症状というのはまさに「氷山の一角」であり,水面下の部分にこそひときわ大きな本質が隠されていると認識されるようになっています。これは同時に,診る人が異なると違う疾患のように受け取られるということの裏返しでもあり,パーキンソン病の多様性を示すものと言えるでしょう。パーキンソン病に似ているが異なるものとしてパーキンソン症候群(パーキンソン関連疾患など)がありますが,これはパーキンソン病の鑑別疾患そのものでもあり,パーキンソン病を診る時には必ず考えなければなりません。鑑別疾患の症状の類似性や,同一疾患における症状の多様性などのため,「パーキンソンはよくわからない」という声が少なからず出ているのではないかとも感じています。
本書は『パーキンソン病診療ガイドライン2018』を読み解くための解説というような大それたものではなく,ガイドラインを読む際に少しでも参考となり,パーキンソン病のことをわかって頂けるようになればと,一介の神経内科医が日頃の経験なども踏まえて書いてみました。筆者がもの忘れ外来を行っている関係もあり,パーキンソン病と関係の深い「レビー小体型認知症」についてもかなりページを割いてみたつもりです。
これまでにない高齢化社会を迎えつつある日本においては,パーキンソン病・認知症のいずれもこれまで以上に患者数が増加してくることが予想されます。そのような状況で,本書の内容が皆さんの今後の日常診療に少しでも役立てば嬉しい限りです。
2019年6月 梅雨を迎えた栃木より
新小山市民病院 神経内科
川上忠孝