編著: | 菊地臣一(福島県立医科大学教授) |
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編著: | 武藤芳照(東大大学院教授) |
編著: | 伊藤晴夫(東京厚生年金病院副院長) |
判型: | B5判 |
頁数: | 146頁 |
装丁: | 単色 |
発行日: | 2007年03月01日 |
ISBN: | 978-4-7849-6096-5 |
版数: | 第4版 |
付録: | - |
椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄、変形性脊椎症など、特に中高年の腰痛を訴える患者さんの日常生活上、リハビリ上起こりうる疑問の1つ1つに答えました。
35項目に症例呈示も含み、腰痛体操・薬物療法からペインクリニック・手術適応までわかりやすく紹介。巻末資料の腰痛体操・ストレッチなどもさらに充実させました。
整形外科医はもとより理学療法士、健康運動指導士の方々にもお薦めします。
診療科: | 整形外科 | 整形外科 |
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リハビリテーション科 | リハビリテーション科 |
Q1腰痛はなぜ起こる
Q2腰痛はどんな原因が多いのか
Q3椎間板ヘルニアとは
Q4脊柱管狭窄とは
Q5変形性脊椎症とは
Q6すべり症とは
Q7骨粗鬆症とは
Q8腫瘍や炎症性疾患による腰痛は
Q9妊娠・出産と腰痛との関連は
Q10ストレスと腰痛の関係は
Q11肥満と腰痛の関係は
Q12ダイエット(減量)のための工夫と注意は
Q13寝具・洗面などの生活上の注意は
Q14作業姿勢,作業環境は 重い荷物をもつ時は
Q15介護の姿勢・動作と腰痛は
Q16歩き方は 長く歩くと痛い時はどうする
Q17靴・履物と腰痛の関係は
Q18杖のすすめ方・選び方,手押し車は
Q19痛くない階段昇降は
Q20温める 冷やす 冷やすとよくない
Q21腰痛用の健康器具の効果は
Q22コルセットの着用は 種類や適応は
Q23腹筋・背筋の鍛え方と注意は
Q24背中と脚のストレッチングの方法は
Q25フィットネスジムでの注意は
Q26牽引の効果は
Q27マッサージは有効か
Q28避けたほうがよい運動は テニスやゴルフは
Q29腰痛のための水中運動は
Q30腰痛のための水泳は
Q31変形性脊椎症・脊柱管狭窄(症)の重症度は
Q32軽症例は
Q33軽症例に対する薬物療法・ペインクリニックは
Q34保存療法で効果のない中等度進行例は
Q35手術の適応例は
資料1 水中運動・水泳の実施上の注意
資料2 腰痛体操
腰痛は、古くて新しい問題です。猿人や古代遺跡で発掘された人骨の化石をみると、脊椎に現代人と同じような退行性変化がみられます。彼らも腰痛に苦しんでいたのかも知れないと考えるのは妥当な仮説です。一方、現代に目を転じると、従来のわれわれの認識とは異なり、70歳代女性の50%近い頻度を除き、腰痛のある人は各年代とも30%台を示しています。つまり、長寿化が進んだ結果もさることながら、腰痛を訴える人は年齢に関係なく多く存在しているということです。事実、国の調査でも腰痛は国民の中で訴えが一番多い症状です。今や腰痛は個人のみならず、社会に対しても大きな問題となっているのです。
腰痛が何故起きるのか、どうしてなかなか治らない人がいるのか、さらにはどう向き合うのかについて、近年、その考え方が大きく変わってきました。腰痛は、腰を構成している椎間板や筋肉だけではなく、仕事上の問題(仕事上のストレス、集中度、満足度、失職、人間関係や評価への不満など)、あるいは心理的な負担(結婚生活、抑うつ、不安など)といった目にみえないストレスが、われわれが認識している以上に早くから、深くかかわっていることがわかってきました。つまり、腰痛は身体的な要因のみで起こるのではなく、精神的・心理的要因などを含んだ全身的な痛みと捉えるべきだという考え方です。真に、心身一如そのものです。
このような腰痛に対する新たな考え方に応じて、治療に対する考え方も変わってきました。それは、患者さんも診療に積極的に参加してともに闘うという考え方です。自分のからだは自分で守り、自分で治すという「攻めの医療」が、従来の医療者側から患者さんへ与えるだけの一方通行である「守りの医療」よりも治療成績も患者さんの満足度も高いことがわかってきました。
そこで、本書の改訂に当たっては、このような腰痛に対する新たな概念に基づきタイトルも『変形性脊椎症・腰痛の運動・生活ガイド』から『腰痛の運動・生活ガイド』に改め、日常生活や仕事上の注意、あるいは身の回りの腰痛に関する疑問に答えるように、その内容を構成してみました。このような考え方からみた腰痛の治療の組み立ては、まず治療する側の視点を「病気」から「病人」へと転換することです。すなわち、「どんな治療をするか」ではなくて「誰を治療するか」です。次に、患者さんの状態や経過によっては心理・社会的な関与因子の評価や対策が求められます。最後に、患者さんが治療方針の決定や治療にかかわる「主体的な医療」の実践です。こうすることによって、腰痛の予防や治療に大きな成果が得られることが期待できます。
本書の新たに構成された内容は、今まで以上に患者さんにとってより有用で、多彩な情報が豊富に盛り込まれた実用書になったと思います。本書が、腰痛の予防や治療に、そして何よりも患者さんがいつまでも元気で動き回れるために少しでも役に立つことを願っています。
平成19(2007)年1月
編集者一同