冷や汗ファイル
マグロの刺身を摂取後、顔面紅潮・全身の蕁麻疹を訴えて受診した59歳男性例
ヒスタミン中毒（アレルギー様食中毒）

運動時の動悸と胸部圧迫感を訴えて受診した60歳女性例
無痛性甲状腺炎による一過性甲状腺中毒症

嚥下時の違和感および軽度の咽頭痛を訴え受診した37歳男性例
亜急性甲状腺炎

高熱の持続と咽頭痛で紹介となった51歳男性例
亜急性甲状腺炎

シンナー吸飲を母親が心配して受診した女子中学生の症例
バセドウ病による甲状腺機能亢進症

全身倦怠感、食思不振がみられた糖尿病の72歳男性例
2型糖尿病による合併症

食思不振、脱力感を主訴としてERに紹介されてきた82歳男性例
高度の高カリウム血症

食欲不振、腎機能障害、意識障害で紹介された骨粗鬆症の72歳女性例
高カルシウム血症による急性腎不全と意識障害

全身のあちこちの痛みと右腕の一過性挙上障害を呈した慢性炎症性貧血の77歳男性例
亜急性感染性心内膜炎による慢性疾患に伴う貧血

肩凝り症状の増悪、および微熱、倦怠感を訴えた72歳女性例
リウマチ性多発筋痛症

急激に症状が増悪したパーキンソン病の79歳男性例
慢性硬膜下血腫

眼球結膜の充血を伴う激しい頭痛を繰り返した54歳男性例
帯状疱疹

躁うつ病で入院した、先天性感音性重度難聴の25歳男性例
（聴覚障害によるストレスが症状を修飾したと思われる）躁うつ病

人前で緊張し、動悸がして、声や手が震えるひきこもり青年の症例
パニック発作を伴う社会不安障害

過食症治療により社会的副作用を生じた25歳女性例
神経性大食症排出型（DSM-IV-TR）

左右を誤診し、健常肺にドレーンを挿入しそうになった緊張性気胸の76歳男性例
左肺緊張性気胸

咳・喀痰が続き、胸膜石灰化が認められた72歳男性例
肺結核

抗菌薬投与により解熱した肺結核の26歳女性例
肺結核

誤嚥性肺炎を起こした在宅療養中の81歳男性例
誤嚥性肺炎

胸背部痛の出現5日後に特発性食道破裂のため緊急手術となった65歳男性例
特発性食道破裂

失神精査、TIA疑いで脳神経外科を受診した84歳男性例
Adams-Stokes症候群による失神

上腹部痛を主訴に救急外来を受診した56歳男性例
右室心筋梗塞

疼痛を伴う下肢腫脹を訴えて受診した不定愁訴が多い70歳女性例
深部静脈血栓症

薬剤溶出性ステント留置後、抗血小板薬の中止が契機となりステント内血栓症を発症した症例
ステント内血栓症

右肩に放散する心窩部から右前胸部の痛みを訴えた61歳男性、胆石例
急性冠症候群

腹痛、嘔吐を主訴に受診した小柄で痩せた老婦人の症例
閉鎖孔ヘルニア

睡眠が昼夜逆転した48歳男性例
潜在性肝性脳症

間歇的腹痛を主訴とした10歳男児例
腸重積

喘鳴、不機嫌を主訴に来院した2歳女児例
アナフィラキシー

右乳房の引きつれ感を主訴に来院した65歳女性例
乳癌

生理前に両側乳腺に軽い緊満感を自覚し来院した40歳女性例
乳頭状腺管癌

著明な心窩部痛と白血球増多を認め来院した88歳女性例
上腸間膜動脈血栓症

潰瘍性大腸炎の手術後、カリニ肺炎を合併した17歳男性例
潰瘍性大腸炎

内痔核の病歴があり、下血を主訴に来院した60歳女性例
S状結腸癌

腹痛を主訴に救急外来を受診した55歳女性例
腸アニサキス症

難治性右下腿浮腫を主訴に来院した79歳男性例
悪性軟部腫瘍

軽度の大腿痛・膝痛ののち、突然激痛で歩行不能となった11歳男児例
大腿骨頭すべり症

胸髄腫瘍に対して椎弓切除術を行った74歳女性例
胸髄腫瘍摘出術後の対麻痺増悪

右鼠径部痛で歩行困難な83歳女性例
右大腿骨頸部内側骨折

突然発症の右下腹部痛にて救急外来を受診し、McBurney，s sign陽性の24歳女性例
クラミジア感染症による骨盤腔内感染症を基礎に持つ患者の左卵巣出血と腹腔内出血による腹膜炎

数カ月来続く右下腹部痛と右季肋部痛を訴え受診した17歳女性例
クラミジア腹膜炎

白色瞳孔を呈して受診した1歳6カ月の男児症例
網膜芽細胞腫

目を開いていられないと訴えて受診した47歳女性例
薬物性眼瞼痙攣

美容整形手術のため自己脂肪を眉間に注入した後、眼動脈閉塞による失明に至った30歳女性例
眉間部への自己脂肪注入により生じた眼動脈閉塞

高度嚥下時痛を訴える割にのどが赤くない47歳男性例
急性喉頭蓋炎

「軽いかぜ」を訴えて来院した54歳男性例
鼻副鼻腔異物

尿管結石より腎盂腎炎を起こし、敗血症性ショックを呈した81歳女性例
播種性血管内凝固症候群

腎機能低下の原因究明が遅れた87歳男性例
腎後性腎不全

外傷後に左下腹部痛を訴え受診した14歳男児例
精巣捻転

法律的観点からみた、日常診療において医師が気をつけるべきポイント

本書に収載された症例49編は、週刊『日本医事新報』誌上にて2006年4月から2年間掲載され、大好評をいただいた「冷や汗ファイル」欄の内容を再構成したものです。

「冷や汗ファイル」欄では、第一線で活躍されている実地医家の先生方が、実例をもとに、日常診療で陥りがちなピットフォールとそれを防ぐための対策・ポイント、診療時の心構えなどを、専門医にコンサルトするべきタイミング等も含め、具体的に読みやすく執筆して下さいました。
日々の診療の中で起こった「冷や汗」体験を敢えて表に出すことを決意し、多忙な診療の合間を縫って執筆して下さったこれらの原稿には、著者一人一人の切なる思いが込められています。それは、「このことを頭に置いて日常診療に臨めば、悲惨な結果の回避につながる」、また「この体験を多くの医師に伝えることがひいては患者さんのためになる」という思いに他なりません。ここに集められた貴重な「冷や汗」体験は医師にとっての共有財産であり、これらの財産が、明日からの日常診療の中できっと役立つものと確信しています。
これらに加えて、弁護士であり医師でもある竹中郁夫先生に「法律的観点からみた、日常診療において医師が気をつけるべきポイント」について書き下ろしていただき、巻末に収載しました。「診療」という、リスクを伴う仕事に従事する医師が知っておくべき基本的な法律の知識を押さえていただければと思います。
改めて、貴重な体験をご披露して下さった先生方に、この場を借りて御礼申し上げます。

2008年3月
日本医事新報社出版局