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放射線防護マニュアル 安全・安心な放射線診断・治療を求めて

こんな時代だからこそ,安全性の再確認を!

定価:3,300円
(本体3,000円+税)

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著: 草間朋子(東京医療保健大学副学長)
著: 小野孝二(東京医療保健大学准教授)
判型: A5判
頁数: 184頁
装丁: 2色刷
発行日: 2013年04月20日
ISBN: 978-4-7849-4155-1
版数: 第3版
付録: -
放射線や放射性物質を頻繁かつ大量に使用している医療領域では,患者さんや医療従事者自身の被曝線量の低減がきわめて重要です。本書では,各種の放射線検査・治療に伴う患者さんの被曝線量を臓器別に提示し,その健康影響や放射線防護について説明。それらを行う医療従事者の健康対策も提示しています。また,「グレイ(Gy)」「シーベルト(Sv)」といった被曝線量の単位,「等価線量」「実効線量」の考え方など,基本事項も徹底解説。

€2011年3月11日の東京電力福島第一原子力発電所の事故以降,国民の放射線被曝・放射線影響への不安が高まる中,患者さんや医療従事者の安全・安心を再確認するための内容が網羅されています。

診療科: 放射線科 放射線科

目次

1 医療領域における放射線被曝と放射線防護
2 医療被曝に対する放射線防護(正当化,最適化の判断)
3 医療被曝の特徴
4 成人の頭頸部CT検査
5 成人の胸部CT検査
6 成人の腹部/骨盤CT検査
7 成人のPET検査
8 上部消化管X線検査
9 下部消化管X線検査(注腸造影検査)
10 IVR
11 成人の単純X線撮影検査(頭頸部,胸部,腹部)
12 成人のインビボ核医学検査
13 乳房撮影(マンモグラフィ)
14 生殖可能年齢の女性患者に対するX線診断
15 若い女性患者に対するインビボ核医学検査
16 妊婦に対する放射線診断(単純X線撮影検査)(骨盤撮影検査を含む)
17 乳幼児に対する単純X線撮影検査
18 乳幼児に対するCT検査
19 乳幼児に対するインビボ核医学検査
20 未熟児,新生児の単純X線撮影検査
21 放射線治療(外部ビーム放射線治療)
22 インビボ核医学検査を受けた患者の取り扱い
23 核医学治療(131Iを用いた治療)を受けた患者との接触等
24 移動式X線撮影装置による撮影(一般病室における移動式X線装置による撮影と同室者等の取り扱い)
25 放射線医療機器等が利用できる場所:管理区域
26 放射線診療従事者の被曝線量の上限(線量限度)
27 女性の放射線診療従事者に対する放射線防護
28 放射線診療従事者の個人モニタリング
29 放射線診療従事者に必要とされる健康診断
30 放射線診療従事者自身の被曝線量(職業被曝)を低減するために医療スタッフ自身が行うべき防護方策
31 輸血用血液や医療器材に対する放射線照射
なぜ,個々の放射線診断の際の被曝線量を低減する必要があるのか
医療被曝の線量の単位はGy(グレイ:吸収線量)
被曝線量の単位として,なぜシーベルトが使われるのか
実効線量(effective dose)と組織加重係数(tissue weighting factor)
放射能の単位としてのベクレル(Bq)
線量限度(dose limit)と診断参考レベル(diagnostic reference level)
CT検査の品質管理のためのCT線量指標(CTDI)
放射線加重係数(radiation weighting factor:wR)
放射線の健康影響の区分
確定的影響(組織反応)と確率的影響〔deterministic effects(tissue reaction)and stochastic effects〕
しきい線量(threshold dose)
不妊のしきい線量
放射線被曝とガンのリスク(生涯リスク)
放射線被曝がなかった場合のガンの罹患率,死亡率(ベースライン)
放射線被曝と遺伝的影響のリスク
骨髄に占める赤色骨髄の割合
放射線誘発ガンに関する疫学調査
放射線被曝と循環器系疾患の発生
放射線被曝と白内障の発生
人体と放射線との相互作用
放射性核種の半減期
外部被曝と内部被曝
職業被曝,公衆被曝,医療被曝
作業環境モニタリング
サーベイメータの種類と特徴
自然放射線
放射線防護関連の法令
原子力施設等の事故
原子力発電所の事故の際の安定ヨウ素剤の投与
食品汚染(内部被曝)と被曝線量
単位の接頭語
医療被曝の防護に関連したICRP勧告・報告
UNSCEAR報告
CT撮影の際の患者の被曝線量を評価するシステムWAZA-ARI

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序文


日本では起こりえないと原子力関係者の間では考えられてきた,国際原子力事象評価尺度で最悪とされるレベル7の原子力事故が,2011年3月11日,東京電力福島第一原子力発電所で起こってしまった。

€この原子力事故をきっかけに,国民の放射線被曝・放射線影響に対する関心は高まり,一般市民向けの放射線計測器が販売される状況にまでなってしまった。これは国民の不安に対する国,行政,専門家による適切な対応が行われなかったことなどが関係し,国民との信頼関係が崩れてしまった結果である。

€事故前も事故後も,放射線や放射性物質が最も頻繁に,しかも大量に使われているのは医療領域である。医療領域の放射線利用では,国民が不安に思っている放射線や放射性物質を意図的に人体に照射したり,投与している。これは放射線利用に伴う患者さんや国民に対する便益が大きく,放射線診療に関わる医療従事者が常に患者さんの被曝の機会を適切に選択し,被曝線量を低減する努力をしていると信頼されているからである。

€今日,そして将来の医療にとって,放射線や放射性物質の利用はなくてはならない手段である。医療における放射線利用を安心して国民が受け入れていくためには,放射線診療に関わるすべての医療従事者が医療放射線利用に伴う患者さんの放射線被曝に関心を持ち,被曝機会を適切に選択して被曝線量の低減に常に努力し,患者さんの不安に客観的に応えることができる状況が必要である。

€この度,本書の第3版の編集のご依頼を受けた。国民の放射線・放射性物質に対する関心が高まっているにもかかわらず,医療被曝に対する医療従事者の意識や知識,患者さんへの対応などは,一部の医療従事者を除いて24年前の初版出版時とほとんど変わっていないことを,患者さんからの相談などを通して実感していた。そこで今回の改訂にあたっては,第一線で活躍されている医療従事者の皆さまが患者さんとの最初の対応で必要とされる最小限の知識を最近の情報とともに盛り込み,全面的に書き直すこととした。医療従事者が患者さんやご家族との対応の「最初の1分」で本書を使って頂き,その後,時間のある時に「解説」に目を通していただき知識を深めて頂ければと思う。

改訂のお話があってから短時間のうちに出版まで漕ぎ着けることができました。時宜を得た適切な対応をしていただきました磯辺栄吉郎さんに深く感謝いたします。

€2013年4月€

東京医療保健大学 草間 朋子

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レビュー

【書評】放射線診療の現場で役立つ、防護のマニュアル

米倉義晴氏(日本学術会議会員/放射線医学総合研究所理事長)
地球上の生物には、常に自然界からの放射線にさらされる環境の下で進化してきた長い歴史がある。人類は、1世紀あまり前に放射線を積極的に利用する新たな技術を開発し、現在では、医療をはじめとして工業や農業など様々な分野でその恩恵を受けている。特に、医療による放射線被ばくは、人工的な放射線による被ばくの大部分を占めており、急速に拡大している。我が国や欧米各国では医療による放射線被ばくが自然界から受ける放射線量を超えると推定されており、これを適切に管理することが求められている。

残念なことに、医療従事者に対する放射線防護の教育はこれまで十分であったとは言えない。2011年3月11日の東日本大震災によって引き起こされた福島第一原子力発電所の事故の際には、一部の医療機関では混乱が生じ、また放射線による影響についての患者からの質問に的確に答えられないという状況も発生した。

医療における放射線防護の基本的なマニュアルとして1998年に本書初版が出版されたが、今回の第3版は、現場の医療従事者が患者への説明の際に役立つようにとの視点で全面的に書き直されている。前半は、医療における放射線防護の考え方と各検査や治療法について31項目の説明により構成されている。各項目それぞれ2〜4頁に簡潔に整理された内容で、放射線診療の現場で役立つ情報が一目で分かるようになっている。

後半には、放射線量測定の原理や方法、放射線防護の基礎となるデータなど34項目に及ぶ解説がつけられている。前半の説明で疑問がある場合には後半の解説をじっくり読むと理解が深まるので、多忙な医療従事者にも利用しやすい構成になっている。

現代の医療において放射線の利用は不可欠である。患者が安心して放射線医療の恩恵を受けられるように、すべての医療関係者が手元に置いて利用したい1冊である。

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