(静岡県 M)
【安全性を確実に保障することは不可能なので,危険性と有益性をその都度検討する必要がある】
本症例のように体内金属を有する場合は,挿入された製品の名称を調査した上で,その製品の添付文書の記載や材質からMRI撮影における危険性を判断するのが望ましいとされています1)2)が,現実的に困難な場合も多々存在します。
体内に留置される医療器具では非磁性金属が主に使用されており,MRIにおける磁場内での吸引,脱落に関しては比較的安全とされています3)4)。術後長期間経過していることからも吸引,脱落のリスクはきわめて低いと考えられます。より考慮すべきはMRI撮影中に発生しうるステンレスのボルト周囲の発熱リスクですが3)4),頭部MRIにおいて肩は一部しか撮影範囲に含まれないため,臨床的に問題となる可能性は低いと考えられます。
しかし,安全性を確実に保障することは不可能なので,MRI撮影前に危険性と有益性とをその都度検討する必要があります。有益性が勝り,撮影する場合には,患者や家族に対しMRIの撮影リスクを説明し,書面で同意を得る,MRI検査依頼書に体内金属の情報(体内金属の種類や部位,挿入時期など)を記載する,といった対応が推奨されます。
MRI撮影時にはこれらの情報をもとに,リスクがより小さくなるような撮影装置と撮影方法を選択し,撮影中の患者をより慎重に観察するなどの対応を行います。
【文献】
1) 宮地利明:日放線技会誌. 2003;59(12):1508-16.
2) 藤原康博, 他:日放線技会誌. 2014;70(12):1413 -9.
3) 村中博幸, 他:日磁気共鳴医会誌. 2010;30(2):49-62.
4) 日本磁気共鳴専門技術者認定機構:安心してMRI検査を受けていただくために.
[http://growlab.co.jp/jmrts/wp/]
【回答者】
那須初子 浜松医科大学医学部附属病院放射線診断科講師