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医業経営ツールボックス 経営編 Vol.7

◆Vol.7 医療機関での無期転換ルール対応

クリニックを開業していますが、契約スタッフ(1年契約)の職員が数名在籍しています。勤続6年以上のスタッフもおり、無期転換ルールの対応をどう考えれば良いか不明です。職員10名以下の事業主(非医療法人)ですが、対応が必要になるのでしょうか? ルールの概要と対応策を知りたいのですが。

職員10名以下の事業主も、有期契約スタッフがおられる場合は、全て無期転換ルールは対象となります。パート・アルバイト・派遣スタッフを採用中の方は、概要の理解と対応方針の決定が求められます。

(1)無期転換ルールの概要
平成25(2013)年4月1日に改正労働契約法が施行され、有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合、有期契約労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されることとなります。
対象は、平成25(2013)年4月1日以降に開始した有期労働契約からですが、改正労働契約法が施行されてから平成30(2018)年4月1日で5年が経過し、今後、無期転換の本格的な発生が見込まれるため、対応方法の検討を開始する必要があります。


(2)自院に無期転換ルールに該当するスタッフが在籍するかの確認について
2-1 有期労働契約と無期労働契約
●有期労働契約 パート・アルバイト・派遣スタッフなどに多く見られる形態ですが、一定の期間を定め契約が更新される雇用形態となります。あくまでも契約の期間が定められている契約の名称ですので、勤務時間が短いなどの雇用条件とは無関係となります。
●無期労働契約 期間の定めがない契約により勤務する形態。採用後は定年や何らかの事情での退職や解雇まで勤務継続となる契約です。
前記の有期労働契約スタッフについて、平成25年4月1日以降の契約更新日・年数の確認が必要です。
2-2 対応が必要となる時期
平成25年4月1日以降の有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合に、労働者本人が雇用主に対して無期転換を希望する権利(無期転換申込権)が発生します。ただし、5年経過時に自動的に無期転換契約に変更ではなく、本人の申込権のみが発生する点の認識を誤らないようにしてください。図1(1年契約の場合)を参考に自院のスタッフの申込権発生時期を把握しましょう。
契約期間が1年の場合は5回目の更新後の1年間に、契約期間が3年の場合は1回目の更新後の3年間に無期転換の申込権が発生します。

参考までに、平成25年4月1日契約の場合の具体例を表示いたしますのでご覧ください。自院のスタッフの契約を確認し、申し入れに備えましょう。(※平成25年4月1日以降の3年契約などの場合は、既に申込権が発生していることになりますので注意が必要です)

(3)無期契約への転換時期について
無期転換希望申し入れ=即無期労働契約へ転換ではありません。
次回の契約更新時から無期契約に転換することになります。具体的には、前記2-2の1年契約例では、平成31年4月1日更新の契約から無期契約となります。ただし、注意が必要な点は、無期契約転換の申し出があった場合、雇用主はそれを拒否することは認められません。また、転換請求権を行使されないように雇い止めを行うことも認められませんので、注意が必要です。

(4)無期労働契約転換による労働条件等の変更について
有期労働契約から無期労働契約に転換することは、契約期間の期限をなくすことであり、即、正規職員に変換することではありません。そのため転換に伴い労働条件の変更などを求められるものではありません。あくまでも契約に期限が無くなるものです。
ただし、正規職員への変更や労働条件の改善を拒むものではありませんので、この点は自院の経営方針に合わせ必要な場合は行うことも可能です。
また、服務規定や就業規則を作成している場合は、内容の変更が必要な場合がありますので、併せて検討してください。

(5)派遣スタッフに関する対応について
有期労働契約の点では派遣契約も有期労働契約となりますが、この場合は派遣会社が雇用主となりますので、派遣元とスタッフとの契約が対象となります。ただし、派遣会社から派遣手数料Upの交渉などが発生することが考えられますので、その点はあらかじめ対応策を考えておかれると良いかと思われます。スタッフが転換請求権を行使するかどうか不明な状態での一括値上げや、法改正による値上げといった依頼は、派遣会社と自院の契約書を確認し、条件交渉してください。

(6)無期転換ルールの特例について
有期雇用特別措置法が平成27年4月1日に施行されたことにより、5年を超えるプロジェクトで有期契約の高度専門職を雇用したり、定年後5年を超えて継続雇用を行う場合には、管轄する都道府県労働局に必要な申請書を作成し認定された場合は、無期転換ルールの適用外となる特例です。こちらは、計画書や認定書類の認可に時間が必要となりますので、申請希望の場合は、早めのお手配をお勧めします。

以上、制度の概要と留意点についてご紹介いたしました。詳細は厚生労働省発行の導入に関する資料や各都道府県の労働局無期転換ルール問合せ先にお問い合わせください。
また、解説セミナーも開催されていますので参加なさることもお薦めいたします。


下記に、正社員化などを行った事業主に対する厚生労働省のキャリアアップ助成金制度・厚生労働省からの導入のためのリーフレット・Webサイト・全国セミナー開催情報の確認先をご紹介いたしますので、ご覧ください。

無期転換ハンドブック(ダウンロード)

Webサイト 有期契約労働者の無期転換ポータルサイト(厚生労働省)

セミナー 「厚生労働省委託事業 労働契約等解説セミナー2017」
 [お問い合わせ先]東京海上日動リスクコンサルティング株式会社 労働契約等解説セミナー事務局 電話:03-6213-6150


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