◆Vol.13 クリニック移転時の物件選択注意点 非医療法人でビルテナントに内科を開業して8年目です。経営は安定していますが、待合室のスペースが狭く、常々患者様に負担をかけていると感じています。 |
移転後の来患予測のために患者層の現状分析を行ってください。 近隣であれば全ての患者様が共に移転と考えるのは危険です。たとえ徒歩5分でも影響がゼロとは言えません。減少数と新患数のシミュレーションを充分に行いましょう。 |
また、現状の問題点の洗い出しにより、患者満足度向上へ繋がる物件選択を心がけることが移転成功への近道です。
1.クリニック移転先選びは、自院来院者の分析から
既来院者住所地のマッピングを詳細に、可能であれば年齢・来院手段も併せて行うとベストです。
-分析ポイント-
●各物件候補地を中心に、来患可能者数のシミュレーションを行い、減少数と新患予測のバランスを検証します。
●高齢者比率や来院手段が徒歩・車のどちらがメインかを把握することで、住所地別とは異なる減少数を検証します。
2.現医院から移転先への患者様の動線を検証
遠くなったと感じる原因は様々、単なる距離以外に注意したいチェックポイントです。
-分析ポイント-
●駅・道路・交差点・橋などをまたぐ位置の場合、距離は近くても通院が継続できなくなる可能性は高くなります。
●駐車場や調剤薬局との距離など、来院時の動線が現医院よりも複雑になると、前より不便になったという意識を持たれる可能性が高くなります。
3.移転先の新患数予測の方法
新規開業同様の診療圏調査となりますが、近隣移転の場合、既来院者も含まれる可能性が高い調査結果となりますので、新旧の診療圏調査結果との差などから実態を把握することが必要です。
4.移転先の面積・レイアウト・構造の検証
患者様に、「良くなった」と感じてもらえることが重要です。
-分析ポイント-
●面積が広い=全てが広くなる。とは限りません。レイアウトのシミュレーションを行い、移転前の問題点(今回は待合室)が改善可能かの検証は必須です。
●新築・美築だけでの判断は危険です。エレベーターの大きさ・共用部の面積、地域の認知度などトータルで判断することをお勧めします。
●建物の構造上で、医療機器・備品等搬入に問題はないかについて、細部まで確認してください。新規開業とは異なり、短時間での移転が前提となりますので注意が必要です。
5.近隣移転物件選びで見落としがちなポイント
●隣接ビル移転でも、電話番号は変わることがあり得ます。患者様への負担を最小限にしての移転を考えた場合、可能な限り変更項目は少なくすることをお勧めしますので、事前にNTTにエリア確認を行うと安心です。
●移転先クリニックの保険診療機関指定申請にあたって、申請日によっては、保険診療ができない期間が発生しますが、現クリニックと移転先の距離が2km以内で、患者様を引き継ぐ前提であれば、遡及適用という手続きにより、保険診療ができない期間をなくすことが可能です。
移転後即保険診療という点にポイントをおかれる場合は、この点を念頭に物件選びなさることも一案です。
以上、クリニック近隣移転時の物件選びのポイントをご紹介しました。移転は閉院と新規開業をほぼ同時に行う作業で諸手続きも多様です。
今回は事務手続きや手順に関しては詳細にご紹介できませんが、その対応は多岐に亘ります。また、移転費用のシミュレーション(表)も閉院関連と開院関連の2つを賄えることが求められます。
表 移転関連費用シミュレーション項目 | |
現クリニック | 移転先 |
現状復帰費用 (内装解体・復旧等) |
テナント費用 (保証金・礼金・仲介料・前家賃等) |
医療機器・備品移転費用 | 内装工事費用 |
閉院事務手続き費用 (諸官庁届出業務 他) |
新規開設事務手続き費用 (諸官庁届出業務 他) |
廃棄物処理費用 | 追加購入医療機器・備品費用 |
― | 移転通知広告費用 |
― | その他諸費用 |
金融機関等での融資申込が必要な場合は、その申請にあたっての手続きの時間も考慮して移転計画を立てることが必要となります。重ねて移転に伴う休診日数は余裕を持って確保できない場合がほとんどのため、ドクターもスタッフも共に負担は多くなります。
十分な検証を行い患者様だけでなく、スタッフやドクターご自身の満足度もUpする移転先を選択してください。
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