◆Vol.9 認定医療法人制度の概要 現在の経過措置型医療法人(持分あり)を基金拠出型医療法人(持分なし)へ移行することを考えていますが、認定医療法人という名称を耳にします。 |
認定医療法人制度は、持分なし医療法人移行の折に、優遇税制や低利融資などが受けられますので、移行予定の方は要チェックです。 ただし、新制度は平成29年10月1日か3年間のみの期間限定制度のため、早めの準備をお薦めします。 |
●認定医療法人制度とは
持分あり医療法人から持分なし医療法人への移行が進まない現状(8割が未だ持分あり)を打開する方策として、平成26年の旧認定医療法人制度を更に充実させ、平成29年度に創設された制度です。
●認定医療法人とは
平成29年10月1日から平成32年9月30日の3年間に、「持分あり医療法人」から「持分なし医療法人」への移行計画を厚生労働省へ申請し、要件を満たしていると認定され移行を進める医療法人のことです。
移行計画の認定を受けた医療法人は、認定の日から3年以内に「持分なし医療法人」へ移行してください。移行しない場合は認定が取り消されて、遡及して課税されますので、注意が必要です。また、移行完了後6年間は、毎年「持分なし医療法人」の運営状況の報告義務が課せられますので、その点は注意が必要です。認定制度の流れは図をご覧ください。
前記制度に関する詳細情報は、厚生労働省ホームページから確認できますが、簡単に概要をご紹介します。
1.認定要件
・移行計画が社員総会において議決されたものであること
・出資者等の十分な理解と検討のもとに移行計画が作成され、持分の放棄の見込みが確実と判断されること等、移行計画の有効性及び適切性に疑義がないこと
・移行計画に記載された移行期限が3年を超えないものであること
・運営に関する要件(役員報酬等が不当に高額にならないような支給基準を定めていること、法人関係者に対して特別の利益を与えないこと等)を満たすこと
2.運営要件
※運営に関する下記の要件は、持分なし医療法人へ移行後6年間満たすことが条件となります。
・法人関係者に対し、特別の利益を与えないこと
・役員に対する報酬等が不当に高額にならないような支給基準を定めていること
・株式会社等に対し、特別の利益を与えないこと
・遊休財産額は事業にかかる費用の額を超えないこと
・法令に違反する事実、帳簿書類の隠ぺい等の事実その他公益に反する事実がないこと
<事業状況>
・社会保険診療等(介護、助産、予防接種含む)にかかる収入金額が全収入金額の80%を超えること
・自費患者に対し請求する金額が、社会保険診療報酬と同一の基準によること
・医業収入が医業費用の150%以内であること
3.猶予税制
・移行期間中に相続・贈与が発生した場合の納税猶予。
・移行期限までに出資持分の放棄を行った場合、猶予税額の免除の手続きが可能です。
※要 医療法人からの放棄申出書(医療法人に提出したもの)
4.融資制度
持分なし医療法人への移行中に、出資持分の払戻が生じ、資金調達が必要となった場合、独立行政法人福祉医療機構による経営安定化資金が貸与可能です。
・貸付限度額:2億5千万円
・償還期間:8年(うち据え置き期間1年以内)
以上が、認定医療法人制度の概要となります。
持分なし医療法人への移行を検討なさる折には、上記制度について顧問の税理士、公認会計士などとご相談の上お進めください。閉院後に思わぬ問題が発生しないよう万全の対策をお薦めします。
(日本医事新報2018年2月24日号掲載)
◆参考 厚生労働省「医療法人・医業経営のホームページ」
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