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医業経営ツールボックス 経営編 Vol.17

◆Vol.14 順調な医院経営のための落とせないチェックポイント

開業3年目のクリニックです。地域に根差した経営を目指し診療にあたっていますが、先々の経営に不安もあります。日々どのような点に留意することが必要かご教示願います。

永続的に安定した経営を目指していくためには、地域の人口分布の変化や行政の医療に関する指針などを常にチェックすることが求められます。
また、自院の患者層の変化を敏感に感じ取ることが可能なシステムの構築も重要です。
診療形態・スタッフ対応・院内環境・他院との比較など多様な面から改善点を見出す努力を怠らないことが、地域に根差したクリニックとして永く存在できる方法です。


■ 経営安定のために行いたい検証項目

1.患者・来患分析
月毎の集計シートを作成し、検証を行いましょう。

《集計項目例 ※診療科目により項目に差があるため一例として表示》
年齢層 自院の診療科目として妥当な年齢層を網羅しているかの判断資料
来患エリア 診療圏内のエリアで抜け落ちているエリアの有無の把握資料
来院時間帯・曜日・待ち時間(受付~会計完了までの所要時間) 現状の診療時間・休診日の妥当性や患者負担度の把握資料
同伴者の有無 小児・高齢者の場合、同伴者への対応の必要性判断資料
診療行為分析(検査、注射、処置内容など) 自院の特色の把握資料

-ポイント-
複数年のデータ作成後は、前年同月との比較が可能となり自院の特性と変化を把握可能となります。
大きく変化した点の原因究明を行い、改善点の洗い出しを行うことが重要です。
また、待ち時間の把握は患者様目線でのサービス向上に有益な情報となり、診療予約システム導入検討時などの参考資料や、待合室の環境整備の資料として重要となります。
診療行為分析も、日常は個別対応の診療行為が統計により数値データとして残り経営分析に有益となります。慢性疾患患者への適切な時期での検査プログラム作成など多忙な院長をサポートできる資料となります。
ただし、上記データ作成はスタッフの協力が不可欠です。作成目標と効果を実感できる対応をお忘れなく。

2.診療報酬改定やその他行政の方向性の把握
● 診療報酬の改定は経営面で重要なポイントです。単に報酬の増減に留まらず、医療に関する行政の今後の方向性を示唆しています。
経営者として、今何をなすべきか、今後自院の軸足をどこに置くべきかの判断指針となりますので、医師会や各種セミナーなどを利用し、充分な理解と今後についてご自身の方針を固めることができる情報源を見つけてください。
● 都道府県・市町村単位の地域医療行政の取り組みに積極的に関与することは、地域に根差したクリニックを目指す方には大変有意義なことです。その為の情報獲得のためのアンテナを張り巡らすことが重要です。
また、助成金などの利用により効果的な新システムの導入が少ない経費で賄える場合もあります。
この点も把握したい情報です。

3.連携可能な医療機関情報の獲得
今後の医療環境を考えた場合、個人クリニック単独での運営に留まらず他院との連携を視野に入れた診療が行えることは、安定した経営には欠かせない要件となります。
しかし、連携には多様な問題点が存在しますので経営理念・方針などを充分に理解・共有できる医療機関を探すことが重要となります。その為の関係づくりに費やす時間を捻出することも重要です。

4.有能なスタッフ確保と育成
個人クリニックは、院長の診療スキルのみでは成り立ちません。患者様はスタッフの対応も含め判断します。一定の接遇マナーを身に付け、コミュニケーション能力の高いスタッフを確保することは、安定経営には必須項目です。
しかし、簡単に理想のスタッフを確保することは至難の技とも言えます。スタッフのメンタル管理・定期的な面談などによりストレスチェックを行い、問題点修復の糸口を探すこと、また、スタッフ研修などの機会(各種セミナー参加や講師に依頼)を作り、患者満足度向上をクリニックのテーマとしてモチベーションUpを図ることをお勧めします。

以上、安定経営のために院内で行える対応策をご紹介しましたが、前述のとおり多忙な院長お一人では困難です。スタッフとの良好な関係構築のために常に明確なクリニックのビジョンを提示し、賛同するスタッフにより運営されるクリニックが安定経営の秘訣です。
また、地域に根差した経営のためには、地域イベントへの参加、患者様・家族向けのサポートイベントなどの開催も積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。結果は必ず形になるはずです。まずは始めてみてください。

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