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【識者の眼】「新型コロナウイルス感染症:子どものSOSと大人のストレスに対応を」小橋孝介

No.5007 (2020年04月11日発行) P.57

小橋孝介 (松戸市立総合医療センター小児科副部長)

登録日: 2020-03-30

最終更新日: 2020-03-31

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中国から始まったCOVID-19の流行は全世界へ広がり、日々感染者数、死亡者数の増加が報道され、欧米諸国では都市封鎖、外出禁止といった未曾有の対応が行われている。感染症としてのCOVID-19に焦点が当てられがちであるが、このように日々の生活が一変するような大きなストレス(精神的な面だけではなく、経済的な面もあるだろう)は、それに直面している家族に対し、大人だけではなく、乳児や幼児も含む子どもにも大きな影響を及ぼす。

子どもはこのようなストレスに対して様々な反応を示す。例えば、イライラして怒りっぽくなったり、いわゆる「赤ちゃん返り」のような行動の退行を示したり、おねしょをするようになったり、などである。「保育園で咳払いをして『コロナウイルス』と言う遊びをしていた」という相談があった。こういった遊びの変化もストレスに対する反応であろう。

これらの反応は子どもからのSOSである。このSOSに対して身近にいる大人は、その行動に対し怒ったりするのではなく、まず子どもに目を向け、寄り添い、子どもの言葉を聴き、子どもが安心できる環境をつくることが重要である。一緒にできる遊び(トランプやボードゲームなど)や運動をするのもよいだろう。

また、年齢に応じて正しい情報をきちんと伝えることも必要である。子どもは入ってくる断片的な情報を、誤った捉え方をして不安や恐怖が増強することがある。米国疾病予防管理センター(CDC)が子どもとCOVID-19について話す際の基本原則等についてページを作成しており参考になる1)

平時に家族機能が十分保たれている家族であれば、上記のような対応を取ることができるだろう。しかしながら、もともとの家族機能が脆弱な、もしくは様々なサポートを受けてなんとか家族機能を保ってきた家族においてこのような状況下ではその維持が難しくなってくる。そして、大人のストレスが弱い立場の子どもに向かう可能性が高くなる。すでに米国では重篤な子ども虐待が増加しているという報道もされている。このような時に、どのように子どもと家族を守っていくのか、既存のシステムでは対応ができない部分をどのようにカバーしていくのか、子ども家庭福祉に関わる専門機関は早急に対策を考えなければならない。

日本小児科学会は2020年3月13日に「普段と異なる状況下における子どもの安心・安全のために」として情報発信を行っている2)。また世界保健機関(WHO)は今回のCOVID-19流行に伴う子どものストレスへの対応についてのリーフレットを作成している3)。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン等の作成した動画4)も参考になる。その他にも米国小児科学会等の海外の様々な団体が様々なリソースを公開している。

我々も医療者として、そして家族の一員としてこれから起こるであろう大きな感染の流行に備えなければならない。

【文献】

1) https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/community/schools-childcare/talking-with-children.html 

2) https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=333 

3) https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/helping-children-cope-with-stress-print.pdf 

4)『感染症対策下における子どもの安心・安全を高めるために』(こども向け)動画版「子どものこころのサポート動画」

  第1回「子どもの一般的な反応・行動」 https://youtu.be/3F2sr_wx0qg

  第2回「見るポイント、聴くポイント」 https://www.youtube.com/watch?v=JjHKthKkJ8o

  第3回「周りの大人へもサポートを」  https://youtu.be/odnHUnJ1BAI 

小橋孝介(松戸市立総合医療センター小児科医長)COVID-19小児科学[児童虐待][子ども家庭福祉]

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