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新生児期に診断されなかった直腸肛門奇形の特徴【収縮中心を指標にした肛門開口部の詳細な観察が重要】

No.4911 (2018年06月09日発行) P.54

青井重善 (京都府立医科大学小児外科講師)

田尻達郎 (京都府立医科大学小児外科教授)

登録日: 2018-06-09

最終更新日: 2018-11-28

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直腸肛門奇形(以下,鎖肛)は通常,新生児期に診断される。しかし,外瘻孔を有する低位型の一部は診断が遅れる例が散見され,その頻度は不明である。当科でこれらの「見逃された鎖肛」について調査を行ったところ,2008~17年に経験した低位鎖肛22例のうち,日齢30以降に診断されたのは8例(女児7例,男児1例)であり,実に36.4%に上った。これらの初診時月齢は6.5カ月(1~26カ月)で,初診時主訴は,便秘,肛門狭窄,血便,肛囲びらん,肛門位置異常であり,4例は新生児期より有症状であった。診断は肛門皮膚瘻6例,肛門後交連瘻1例,肛門腟前庭部瘻1例であり,7例で根治手術を行った。術式はcut back肛門形成術が3例,後矢状切開直腸肛門形成術(PSARP)が4例で選択された。1例は排便機能が保たれていることから,無治療経過観察中である。

鎖肛という病名から連想される「肛門が閉鎖」「排便がない」が必ずしもすべての鎖肛の病態を表しておらず,新生児期の見落としの原因になっている。さらに診断・治療の遅れが排便機能に影響を与え,回復に時間を要する例が決して稀ではないことが今回の調査で判明した。離乳食開始後の便秘増悪や難治性の便秘,肛門周囲の皮膚トラブルといった普遍的な症状でも,収縮中心を指標にした肛門開口部の詳細な観察が重要である。

【参考】

▶ 髙松英夫, 他, 監:標準小児外科学. 第7版. 医学書院, 2017, p236.

▶ 岩井 潤, 他:小児診療. 2012;75(2):292-8.

【解説】

青井重善*1,田尻達郎*2  *1京都府立医科大学小児外科講師 *2同教授

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