【質問者】
江畑智希 名古屋大学大学院腫瘍外科学准教授
肝切除は出血量が多い術式です。出血には肝臓内への流入血であるGlisson系と流出血である肝静脈系にわかれ,流入血制御はPringle-Duchinova法でほぼ対応できます。一方で肝静脈からの出血はCVPに左右されるため,CVPをいかにして下げるかについて検討が行われてきました。total vascular exclusionを行うよりも肝下部下大静脈のみを遮断することにより,CVPが下がり出血量軽減につながることがわかりました1)。肝下部下大静脈を全周剝離し,ターニケットをかけクランプを行い,血圧80mmHg,CVP 5cmH2Oを下回らないように調節します。また,瀉血法や麻酔医協力のもとで輸液量制限,気道内圧を抑える低換気麻酔なども行われます。すべてCVPを下げるための工夫です。そこで,約10°のreversed Trendelenburg position(rTP)のCVP変化を測定したところ,肝下部下大静脈遮断と同程度のCVP低下を確認しました2)。近年,急増する腹腔鏡下肝切除では気腹圧により出血を抑えられると言われていますが,視野確保のために炭酸ガスを横隔膜下に集める目的で頭高位にします。自然にrTPとなって肝静脈出血制御の体位になっています。この出血制御法は非常に簡便で,明日にでも手術に取り入れることが可能です。
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